倉庫として使っている建物、EC販売で使う撮影機材やパソコン——こうした事業用の資産にも「固定資産税」や「償却資産税」がかかることは知っていても、「どこに申告するのか」「いつ経費にしていいのか」が分からないまま、毎年の決算で手が止まる事業者は少なくありません。
- 自分の資産は固定資産税の対象になる?
- 市区町村に別途「償却資産申告書」を出さなければいけないの?
- 支払った税金をいつ・どうやって経費に計上すればいい?
この記事では、国内EC物販を営む個人事業主・法人の方に向けて、これらの疑問に順番に答えていきます。
この記事でわかること
- 事業用資産にかかる固定資産税・償却資産税の対象範囲
- 毎年1月末が期限の「償却資産申告」の仕組み
- 支払った税金を必要経費に算入するタイミングと選択肢
- 誤りやすいポイントと、税理士に相談すべき境目
まず結論:事業用資産の税金は「必要経費」に算入できる
国税庁タックスアンサー No.2215 によると、業務の用に供される資産に係る固定資産税・不動産取得税・登録免許税などは、所得税の計算上、必要経費に算入できます。
EC物販の現場でいえば、事業に使う倉庫・作業場の固定資産税、事業用の車両・機材にかかる自動車税や自動車取得税が代表例です。加えて、建物や土地以外の事業用動産(パソコン・棚・梱包機など)には、市区町村へ別途「償却資産申告」を行う必要があり、その結果として課される「償却資産税(固定資産税の一種)」も同様に必要経費として扱えます。
この記事の対象になる方
| 状況 | 該当する? |
|---|---|
| 自宅の一部を倉庫・作業場として使っている | △ 事業使用割合分のみ対象 |
| 別途倉庫・事務所を借りずに所有している | ○ 対象 |
| EC販売用のパソコン・カメラ・梱包機を所有している | ○ 償却資産申告の対象になりうる |
| 事業用の軽自動車・トラックを所有している | ○ 自動車税等が必要経費の対象 |
| 賃貸倉庫を借りているだけ(資産は持っていない) | △ 固定資産税・償却資産税は原則なし |
固定資産税・償却資産税とは何か
不動産にかかる固定資産税
土地・建物は市区町村が評価額をもとに毎年課税します。課税通知書が届いたら支払うだけで、所有者が別途「申告」する必要は基本的にありません。事業用に使っている建物(倉庫、作業場など)であれば、その固定資産税は必要経費になります。
自宅兼倉庫のように事業と私用を兼ねている場合は、事業使用割合(面積比など)で按分し、事業部分のみを必要経費とします。
動産にかかる償却資産税
建物・土地とは別に、事業用の機械・器具・備品なども「固定資産税(償却資産)」の課税対象です。ただし、土地・建物と異なり、所有者自身が毎年1月1日時点の保有状況を市区町村に申告する義務があります(地方税法362条)。この仕組みを「償却資産申告」といいます。
申告期限は毎年1月31日。前年中に取得・廃棄・売却した資産の情報を申告書に記載して提出します。市区町村はこの申告をもとに課税額を決定し、4〜6月ごろに納付書を送ってきます。
償却資産申告の対象になる資産
EC物販で特に関係しやすい資産を整理します。
| 資産の種類 | 具体例 | 申告対象 |
|---|---|---|
| 器具・備品 | パソコン、撮影機材、照明、棚、デスク | ○ |
| 機械・装置 | 梱包機、シーラー、フォークリフト | ○ |
| 工具 | 電動工具、計測器 | ○ |
| 車両・運搬具 | 軽トラック(自動車税の対象でもある) | ○※ |
| 建物付属設備 | 内装工事、エアコン(リース物件を除く) | ○ |
| 少額資産(取得価額10万円未満) | 消耗品扱いのもの | × |
| 一括償却資産(20万円未満を選択) | 3年均等償却を選んだもの | × |
| ソフトウェア | 会計ソフト等の無形固定資産 | × |
※ 自動車は自動車税がかかるため、償却資産申告の対象外となる市区町村が多いですが、フォークリフトなど公道走行しない車両は対象になる場合があります。確認が必要です。
少額減価償却資産の特例との関係(令和8年度改正)
青色申告者向けの「少額減価償却資産の特例」を使って全額必要経費にした資産は、償却資産申告からは除外されません。この特例は所得税・法人税上の処理であり、市区町村の固定資産税(償却資産)とは別のルールが適用されます。
なお、令和8年度税制改正により、この特例の取得価額基準が変わっています。
- 令和8年3月31日以前に取得等した資産:取得価額30万円未満が対象
- 令和8年4月1日以後に取得等した資産:取得価額40万円未満が対象
適用期限は3年延長され、年間上限300万円は変わりません(個人事業者にも同様の措置あり)。ただし、この特例を使って全額経費にした資産でも、償却資産申告では「取得価額の全額を申告対象に含める」扱いになるため、申告を省略しないよう注意してください。
必要経費に算入するタイミング
固定資産税などを「いつの経費にするか」は、所得税の計算上、原則と選択肢があります(タックスアンサー No.2215・所基通37-5〜37-6)。
原則:賦課決定があった年分
固定資産税・償却資産税は賦課課税方式(市区町村が課税額を決定して通知する仕組み)なので、原則として賦課決定があった年分の必要経費になります。つまり、4〜6月ごろに納付書が届いた年に経費計上するのが基本です。
選択肢:納期ごとに経費計上もできる
固定資産税は通常、年4回の納期(4月・7月・12月・翌年2月など)に分けて支払います。この場合、各納期の開始日が属する年分、または実際に納付した日が属する年分に必要経費とすることもできます。
具体例で見てみましょう。
| 納期 | 原則(賦課決定年) | 選択①(納期開始日) | 選択②(実際の納付日) |
|---|---|---|---|
| 第1期(4月) | 当年分 | 当年分 | 当年分 |
| 第2期(7月) | 当年分 | 当年分 | 当年分 |
| 第3期(12月) | 当年分 | 当年分 | 当年分 |
| 第4期(翌年2月) | 当年分 | 翌年分 | 翌年分 |
第4期分を翌年2月に実際に払った場合、原則では「賦課決定年=当年」の経費ですが、「翌年2月(納期開始日)が属する年=翌年」の経費とすることも選択できます。どちらを選ぶかは事業者が決められますが、毎年同じ方法を継続適用することが実務上の安定した処理です。
よくある間違い
間違い①:償却資産申告を「しなくていい」と思い込む
「少額減価償却資産の特例で全額経費にしたから、もう手続きは終わり」と思い、市区町村への償却資産申告をしていないケースがよくあります。
所得税上の処理と、市区町村の固定資産税(償却資産)の申告は完全に別のルールです。特例を使って全額経費にした資産でも、取得価額が課税対象の範囲なら申告義務があります。申告漏れは後日調査で指摘されることがあり、過去に遡って課税・延滞金が発生するリスクがあります。
間違い②:自宅兼用の固定資産税を全額経費にする
自宅の一部を倉庫や撮影スタジオとして使っている場合、固定資産税の全額を必要経費にするのは誤りです。事業使用割合(床面積比など合理的な基準)で按分し、事業部分だけを経費にします。按分の根拠となる計算メモや間取り図などを保存しておくと、税務調査の際に説明しやすくなります。
間違い③:納付書が来た年だけに経費計上できると思っている
「第4期分は翌年2月に払うから、翌年の経費」と単純に考えがちですが、原則は賦課決定年の経費です。第4期分を「翌年の経費にしたい」なら、「納期開始日基準」または「実際の納付日基準」を意識的に選択して継続適用することができます。毎年バラバラな処理をすると、同じ税額が二重に経費になったり、逆に漏れたりするリスクがあります。
自分で確認できるチェックリスト
□ 事業用に建物・土地を所有している場合、固定資産税の納付書を保存しているか
□ 事業用のパソコン・機材・棚などを取得した年に、翌年1月の償却資産申告に記載したか
□ 少額減価償却資産の特例を適用した資産も、償却資産申告書に記載しているか
□ 自宅兼用の場合、按分割合を合理的な根拠(面積比など)で計算しているか
□ 固定資産税の経費計上時期(賦課決定年 or 納期別)を毎年同じ方法で処理しているか
□ 廃棄・売却した資産を翌年1月の償却資産申告書から除外しているか
税理士に相談した方がいいケース
次のいずれかに当てはまる場合は、自己判断だけで処理するよりも専門家に確認することをおすすめします。
- 倉庫・作業場の建設や内装工事を行い、建物附属設備の取り扱いに迷っている
- 複数の市区町村に資産が分散していて、申告先が不明確
- リース資産と自社所有資産が混在しており、申告対象の切り分けが難しい
- 過去に償却資産申告をしていなかった可能性があり、遡及修正が必要かもしれない
- 事業用・私用が混在する資産の按分割合に自信がない
- 減価償却の方法(定額法・定率法)や耐用年数の設定に不安がある
よくある質問
賃貸倉庫を借りているだけなら償却資産申告は不要ですか?
建物そのものを借りているだけなら、建物の固定資産税は家主側の負担です。あなた自身が申告するのは「あなたが所有する資産(棚・機材・内装工事など)」に限られます。賃借した建物に自己負担で内装工事をした場合は、その工事部分が償却資産申告の対象になります。
中古で取得した資産も申告が必要ですか?
必要です。新品・中古を問わず、事業用に所有する固定資産は申告対象です。中古の取得価額は実際の購入価格で申告します。
支払った固定資産税はどの勘定科目で帳簿に記録しますか?
一般的に「租税公課」勘定を使います。固定資産税・償却資産税・不動産取得税・自動車税・自動車取得税などは、いずれも「租税公課」として記帳するのが一般的な実務です。なお、記帳の際は納付書や領収書を証憑として保存してください(タックスアンサー No.2080 参照)。
廃棄した機材を申告書から消し忘れた場合はどうなりますか?
翌年の償却資産申告書に「減少資産」として記載することで修正できます。すでに課税されてしまった分については、市区町村の固定資産税担当窓口に相談すると、過誤納として還付を受けられる場合があります。
まとめ
事業用の建物・動産にかかる固定資産税・償却資産税は、いずれも必要経費として所得計算に算入できます。ポイントを整理すると次のとおりです。
- 土地・建物の固定資産税は市区町村からの納付書が届いたら支払い、必要経費に算入
- パソコン・機材・棚など事業用動産は、毎年1月31日までに市区町村へ償却資産申告を行う
- 少額減価償却資産の特例を使った資産でも、償却資産申告は別途必要
- 経費計上のタイミングは「賦課決定年」が原則。第4期分等は「納期開始日」「実際の納付日」基準も選択できる
- 自宅兼用の場合は事業使用割合で按分し、事業分だけを経費に
特に申告漏れが起きやすい「償却資産申告」は、毎年1月に資産の棚卸しを行う習慣をつけることが実務上の確実な対策です。
本記事は情報提供を目的として作成しており、特定の税務判断を推奨するものではありません。実際の税務処理・申告については、税理士等の専門家にご相談ください。個別事情によって結論が異なる場合があります。
事業用資産の経費処理や償却資産申告の対象・方法は、取り扱う商品や保有資産の種類によって異なります。「自分のケースではどうなるか」を確認したい場合は、税理士への相談がおすすめです。毛利順活税理士事務所では、初回のご相談を無料で承っております。お気軽にお問い合わせください。