EC物販をされていると、卸先や外注先から「まだインボイス登録をしていません」と言われることがあります。そうした場合、「その仕入はもう経費にならないのか」「消費税は全く控除できないのか」と不安になりやすいところです。
結論からいえば、原則として適格請求書発行事業者以外からの課税仕入れは、仕入税額控除の対象になりにくいです。ただし、一定期間は経過措置があり、未登録事業者からの仕入でも一定割合の控除が認められる場合があります。ここはEC物販セラーの実務で特に判断が分かれやすい点です。
原則と経過措置の考え方
原則として、仕入税額控除を受けるには、登録番号などの記載がある適格請求書の保存が必要です。したがって、仕入先が未登録でインボイスを発行できない場合、そのままでは通常の要件を満たしません。
もっとも、制度開始後の一定期間は経過措置が設けられており、未登録事業者からの課税仕入れについても、帳簿と一定事項を記載した請求書等を保存していれば、仕入税額相当額の一定割合を控除できる場合があります。一般的には、時期によって80%控除、さらにその後は50%控除へ移行します。
ただし、いつの取引か、相手が本当に未登録なのか、課税仕入れに該当するのかで結論が変わることがあります。実務では「未登録だから一律にゼロ」「請求書があれば一律にOK」とは言い切れません。
【想定事例】EC物販で迷いやすいケース
1. 国内卸業者からの仕入だが、登録番号がない場合
たとえば、国内の小規模卸業者から商品を仕入れており、請求書は届くものの登録番号の記載がないケースです。原則では適格請求書に該当しないため、通常の仕入税額控除は難しいです。
ただし、その卸業者が未登録であり、経過措置の対象期間内であれば、一定割合の控除を検討できる場合があります。このときは、請求書や納品書、振込記録などを整理し、未登録事業者からの仕入であることが分かるようにしておくのが実務上重要です。
2. 外注先が「申請中」と言っている場合
商品ページ作成や発送補助などを外注していて、相手から「登録申請中です」と案内されることがあります。この場合、原則は実際に登録され、登録番号が確認できるまでは適格請求書発行事業者として扱わないのが安全です。
申請中という説明だけでインボイスありとして処理すると、後で登録時期がずれていた場合に修正が必要になることがあります。登録番号と登録年月日を確認し、どの時点の役務提供かまで見て判断することが一般的です。
3. フリマ・個人事業者からの単発仕入の場合
EC物販では、在庫確保のために個人事業者や小規模な相手から単発で仕入れることもあります。こうした相手が未登録である場合、経過措置の適用余地はありますが、継続取引でないため書類保存が不十分になりやすい点に注意が必要です。
単発取引ほど、取引日、金額、内容、相手先情報が後で追えなくなることがあります。税務調査では保存書類の整合性が重視されやすいため、チャット履歴や送金記録だけで足りるかは個別事情によります。
仕入先への確認はどう進めるべきか
実務上は、仕入先に対して「登録番号の有無」「登録開始時期」を簡潔に確認するのが基本です。必要以上に強い表現で迫るより、請求書様式の確認として依頼する方が進めやすいことがあります。
また、確認結果は口頭で終わらせず、メール等で残しておくと後日の整理に役立ちます。未登録であれば、その期間の仕入について経過措置の対象として区分し、登録後は適格請求書の保存に切り替える、といった運用が考えられます。
判断に迷ったら、時期と証憑をセットで確認してください
インボイス対応は、「相手が未登録かどうか」だけでなく、「いつの取引か」「どの書類が残っているか」で結論が変わりやすい分野です。特に80%控除から50%控除へ移る時期は、処理を誤りやすいポイントです。
ご自身で判断しにくい場合は、請求書、納品書、発注履歴、振込記録をまとめたうえで、税理士等の専門家に確認されることをおすすめします。国税庁の「インボイス制度の概要」も、制度全体を把握する出発点として参考になります。
「本記事は情報提供を目的として作成しており、特定の税務判断を推奨するものではありません。実際の税務処理・申告については、税理士等の専門家にご相談ください。個別事情によって結論が異なる場合があります。」
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