扶養から外れる?売上が伸びてきたサロンオーナーが確認すべき社会保険と税の違い

社会保険の扶養(年収130万円基準)と税の扶養(所得基準)は判定基準がまったく異なる。税の扶養は令和7年分58万円、令和8年分以後62万円。売上が伸びてきたサロンオーナーは両方を別々に確認する必要がある。

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「お客さんが増えてきて売上が上がってきたけど、夫の扶養から外れるタイミングはいつ?」——予約が埋まりはじめた頃、多くのサロンオーナーが一度はこの疑問を抱きます。

しかし、「扶養」という言葉には社会保険の扶養税の扶養(配偶者控除)という、まったく別の制度が混在しています。どちらも「年収130万円」「103万円の壁」といったキーワードで語られるため、混同したまま進めてしまうケースが少なくありません。

  • 売上が上がっても扶養に残れるの?
  • 経費を引いた後の金額で判定するの?
  • 社会保険と税で基準が違うって本当?

この記事では、この2つの「扶養」の仕組みと判定基準の違いを整理します。


この記事でわかること

  • 社会保険の扶養と税の扶養(配偶者控除)は何が違うか
  • サロンオーナー(個人事業主)に当てはまる判定基準
  • よくある誤解とその具体的なリスク
  • 自分のケースで確認すべきチェックポイント
  • 税理士への相談が必要になる場面の目安

まず結論:2つの「扶養」は別物として管理する

社会保険の扶養は「年収130万円未満」、税の扶養(配偶者控除)は合計所得金額について令和7年分は58万円以下、令和8年分以後は62万円以下が基本の判定ラインです。この2つは根拠となる法律も、判定に使う金額の定義も異なります。

特に個人事業主の場合、社会保険は日本年金機構の案内(「※自営業者についての収入額は、当該事業遂行のための必要経費を控除した額となります。」)のとおり必要経費を控除した額で判定され、税も経費を差し引いた所得で判定するという点は共通していますが、どの支出が経費として認められるかの範囲など、判定の枠組みがそれぞれ異なります。どちらかの扶養を外れたからといって、もう一方も自動的に外れるわけではありません。


対象になる方:このケースに当てはまりますか

この記事が特に役立つのは、次のような状況の方です。

  • 配偶者(会社員など)の社会保険や税の扶養に入っている
  • 自宅サロン・賃貸サロンで個人事業として美容・ネイル・まつエクなどを営んでいる
  • 最近予約が増え、月の売上が増えてきた
  • 「扶養から外れるかどうか」を年単位でそろそろ確認しておきたい

2つの「扶養」の違いを整理する

まず、社会保険の扶養と税の扶養の根本的な違いを確認しましょう。

項目 社会保険の扶養 税の扶養(配偶者控除)
根拠 健康保険法・厚生年金保険法・日本年金機構の案内 所得税法(国税庁 No.1191
判定の基準額 年間収入130万円未満(自営業者は当該事業遂行のための必要経費を控除した額) 合計所得金額:令和7年分は58万円以下、令和8年分以後は62万円以下(令和6年分以前は48万円以下)
経費の扱い 当該事業遂行のための必要経費を控除した額で判定(どの支出が必要経費と認められるかは保険者が判断) 差し引いた後の「所得」で判定
手続き先 配偶者が加入する健康保険組合・協会けんぽ 配偶者の年末調整または本人の確定申告
外れた場合 自分で国民健康保険・国民年金に加入 配偶者の税負担が増える(控除が減る)

この2つは制度がまったく別なので、「どちらか一方を満たせばよい」という性質のものではありません。それぞれ独立して判定し、どちらに該当するかを確認する必要があります。


社会保険の扶養:サロンオーナーが気をつける点

社会保険の扶養(被扶養者)に入るには、年間収入が130万円未満(60歳以上や障害者は180万円未満)かつ同居の場合は被保険者(扶養者)の収入の半分未満であることが求められます(日本年金機構の案内による)。

ここで個人事業主にとって重要なのは、自営業者の収入額は当該事業遂行のための必要経費を控除した額となります(日本年金機構)、という点です。つまり、売上そのものではなく、必要経費を差し引いた後の金額が判定に使われます。

ただし、注意が必要な点があります。社会保険で控除できるのは当該事業遂行のための必要経費に限られており、税法上の必要経費のすべてが認められるとは限りません。どの支出が必要経費として認められるかの範囲は、最終的に保険者(健康保険組合・協会けんぽ等)が生活の実態を勘案して認定します(厚生労働省 昭和52年4月6日 庁保発第9号)。

  • 給与所得者の場合:額面の給与収入をそのまま使う
  • 個人事業主の場合:当該事業遂行のための必要経費を控除した額で判定するが、どの支出が必要経費と認められるかは保険者が判断する

実務上の重要ポイント:加入する健康保険の窓口や組合に直接確認するのが確実です。自己判断で手続きを遅らせると、保険の遡及脱退を求められる場合があるので、まず問い合わせましょう。


税の扶養(配偶者控除):所得で判定する

税の扶養は、国税庁タックスアンサー No.1190「配偶者の所得がいくらまでなら配偶者控除が受けられるか」に基づく制度です。

配偶者控除を受けるには、控除対象配偶者が次の4要件をすべて満たす必要があります。

  1. 民法上の配偶者であること(内縁関係は対象外)
  2. 納税者と生計を一にしていること
  3. その年の合計所得金額が58万円以下であること(令和7年分。令和6年分以前は48万円以下。令和8年分以後は62万円以下)
  4. 青色申告者の事業専従者としてその年に一度も給与の支払を受けていないこと、または白色申告者の事業専従者でないこと(国税庁 No.1191

また、配偶者控除を受ける側(夫など)の合計所得金額が1,000万円を超える場合は配偶者控除を受けられません

個人事業主の「合計所得金額」とは

給与所得者と異なり、サロンオーナーのような個人事業主の場合、所得は次のように計算します。

合計所得金額 = 売上(総収入金額) − 必要経費

国税庁 No.1350「事業所得の課税のしくみ」参照)

つまり、売上が150万円あっても、家賃・材料費・備品代などの必要経費が合計100万円あれば、事業所得は50万円となります。令和7年分の58万円以下の要件も、令和8年分以後の62万円以下の要件も、いずれも満たす可能性があります。

ただし、青色申告特別控除(最大65万円)は合計所得金額の計算には含めません。所得金額計算の段階ではなく、課税所得の計算で差し引かれるものです。

配偶者控除の控除額

配偶者控除の額は、控除を受ける納税者本人(夫など)の合計所得金額によって変わります。

本人の合計所得金額 一般の控除対象配偶者 老人控除対象配偶者
900万円以下 38万円 48万円
900万円超950万円以下 26万円 32万円
950万円超1,000万円以下 13万円 16万円
1,000万円超 対象外 対象外

(出典:国税庁 No.1191「配偶者控除」

配偶者の合計所得金額が一定額を超えても133万円以下であれば、配偶者特別控除(最高38万円)の対象となる場合があります。令和7年分については国税庁タックスアンサー No.1191 のとおり58万円超133万円以下が対象とされていますが、令和8年分以後の下限については確認できない部分がありますので、国税庁のタックスアンサーで最新の情報をご確認ください。合計所得金額がわずかに要件を超えたからといって、控除がゼロになるわけではありません。


よくある誤解:「103万円の壁」をそのまま使ってしまう

誤解①:売上が103万円を超えたら扶養から外れる

「103万円の壁」は、給与所得者に対して適用される考え方です。給与所得者の場合、給与収入103万円から給与所得控除(最低55万円)と基礎控除(令和6年分まで48万円)を引くと所得がゼロになる、というラインです。

個人事業主のサロンオーナーには給与所得控除がありません。あくまで「売上 − 必要経費 = 事業所得」が所定の合計所得金額以下かどうかで判定します。売上が103万円を超えても、経費を差し引いた事業所得が令和7年分では58万円以下、令和8年分以後では62万円以下であれば、配偶者控除の要件を満たしている可能性があります。

誤解②:社会保険の扶養を外れたら税の扶養も自動的に外れる

2つの制度は完全に独立しています。社会保険の扶養を外れて国民健康保険に加入した後でも、税の要件(たとえば令和7年分では事業所得が58万円以下など)を満たせば配偶者控除は引き続き適用できます。逆もしかりです。混同すると、受けられるはずの控除を自分で放棄してしまうことがあります。

誤解③:令和6年分と令和7年分で基準が同じ

令和7年分から配偶者控除の要件が変わっています。控除対象配偶者の合計所得金額の上限が、令和6年分以前の48万円から令和7年分は58万円に引き上げられました。さらに令和8年分以後は62万円に引き上げられています(令和8年度税制改正)。令和6年分の確定申告時の数字をそのまま令和7年分以後に当てはめないよう注意が必要です。


自分のケースで確認するチェックリスト

以下の項目を順番に確認してください。

# 確認事項 はい/いいえ
1 配偶者(夫など)が会社員で、社会保険・税の扶養に入っている はい/いいえ
2 今年の売上(見込み)を把握している はい/いいえ
3 今年の必要経費(材料費・家賃・備品など)を集計している はい/いいえ
4 事業所得(売上−経費)が62万円以下かどうかを試算した(令和8年分) はい/いいえ
5 加入している健康保険の扶養基準(どの支出が必要経費と認められるか等)を確認した はい/いいえ
6 配偶者の合計所得金額が1,000万円以下であることを確認した はい/いいえ

1〜6がすべて「はい」であれば、判断に必要な情報はほぼ揃っています。「いいえ」が残っている項目が判断の起点になります。


税理士への相談が必要になる場面

次のいずれかに当てはまる場合は、自己判断を進める前に専門家への相談をお勧めします。

  • 売上が増加傾向にあり、事業所得が年間50万円前後で推移している(令和7年分は58万円、令和8年分以後は62万円のラインが近い)
  • 経費として認められるかどうか判断に迷う支出が多い(自宅サロンの家賃按分、スマートフォン代など)
  • 配偶者が高収入で、配偶者控除の段階的な適用(900万円超の逓減)に当てはまる可能性がある
  • 青色申告への切り替えや事業専従者給与の設定を検討している(要件④に関係する)
  • 社会保険の扶養と税の扶養の外れるタイミングが年をまたぐケースで、手続きの順番に迷っている

よくある質問

売上が130万円を超えたら、すぐに社会保険の扶養を外れなければなりませんか?

自営業者の場合、社会保険の扶養判定には売上ではなく当該事業遂行のための必要経費を控除した額が用いられます(日本年金機構)。ただし、どの支出が必要経費として認められるかは保険者が判断するため、まず配偶者が加入している健康保険組合や協会けんぽに確認したうえで判断することをお勧めします。自己判断で手続きを遅らせると、保険の遡及脱退を求められる場合があるので、早めの確認が安全です。

配偶者控除が受けられなくなると、税負担はどのくらい増えますか?

配偶者(夫など)の合計所得金額が900万円以下の場合、配偶者控除の額は38万円です。所得税率が20%であれば7万6千円、住民税(一律10%)では3万8千円、合計で約11万4千円の税負担増となります。ただし、配偶者の所得金額や適用される税率によって金額は変わります。

青色申告特別控除(65万円控除)は扶養の判定に使えますか?

税の扶養(配偶者控除)の判定に使う「合計所得金額」の計算には、青色申告特別控除は含まれません。事業所得の段階ではなく、課税所得の計算時に差し引かれる控除です。合計所得金額の計算では「売上−必要経費」を基本とし、65万円控除はその後の課税所得計算で使うものとして区別してください。

配偶者控除と配偶者特別控除は何が違いますか?

令和7年分については、配偶者の合計所得金額が58万円以下であれば配偶者控除、58万円超133万円以下であれば配偶者特別控除の対象となります(国税庁タックスアンサー No.1191)。令和8年分以後の配偶者特別控除の範囲については、国税庁のタックスアンサーで最新の情報をご確認ください。配偶者特別控除は最高38万円で、配偶者の所得に応じて段階的に減ります。売上が増えて所得が要件をやや超えても、すぐに控除がゼロになるわけではない点は覚えておくと判断の助けになります。


まとめ

「扶養」と一口に言っても、社会保険の扶養と税の扶養(配偶者控除)はまったく別の制度です。

社会保険は必要経費(当該事業遂行のための経費)を控除した年間収入130万円未満(日本年金機構・厚生労働省)、税の扶養は必要経費を差し引いた合計所得金額が令和7年分は58万円以下、令和8年分以後は62万円以下という判定基準のズレが、多くの混乱を生んでいます。

売上が伸びてきたサロンオーナーが特に注意すべき点を整理すると、次のとおりです。

  • 売上そのものではなく、経費を引いた事業所得が税の扶養判定の基準
  • 社会保険の扶養も自営業者は必要経費控除後の金額で判定されるが、どの支出が必要経費と認められるかは保険者に直接確認する
  • 配偶者控除の所得要件は令和7年分から58万円、令和8年分以後は62万円に変わっている
  • どちらかを外れても、もう一方は自動的には変わらない

事業の成長とともに判断が複雑になる部分でもありますので、年の途中から見通しが立てられるよう、早めに状況を整理しておくと安心です。


本記事は情報提供を目的として作成しており、特定の税務判断を推奨するものではありません。実際の税務処理・申告については、税理士等の専門家にご相談ください。個別事情によって結論が異なる場合があります。

サロン経営では、開業届から日々の記帳、消費税の届出判断まで、段階ごとに異なる税務対応が必要です。「今の自分に必要な手続きは何か」を整理したい方は、お気軽にご相談ください。

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免責事項 本記事は情報提供を目的として作成しており、個別の税務アドバイスではありません。実際の税務判断・手続きについては、税理士等の専門家にご相談ください。税制は改正される場合があり、記事の内容が最新状況と異なることがあります。個別事情によって結論が異なる場合がありますので、必ずご自身の状況に合わせてご確認ください。

参考:配偶者の所得がいくらまでなら配偶者控除が受けられるか

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