実家と預金と保険、財産評価はどの順で進める?|相続準備の実務ケース

自宅・預金・生命保険が混在する典型的な相続準備ケースを使い、財産ごとの評価手順と数値の拾い方を具体的に整理しています。

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この記事で分かること

「相続税がかかるかどうか、一度試算してみたい」と考えているご家族を対象に、自宅・預貯金・生命保険が混在する典型的なケースを通じて、財産評価を実務上どの順で進めるかを具体的に示します。計算式の丸暗記より「何をどこで拾うか」の感覚をつかむことを目的としています。


想定事例:75歳・父の財産を生前に棚卸しするケース

【想定事例】

  • 登場人物:父(75歳)、母(72歳)、子2人(長男・長女)
  • 父の財産構成(概算):自宅土地・建物、預貯金、生命保険(契約者=父、受取人=長男)
  • 目的:生前に「相続税がかかるかどうか」を確認したい
  • 前提:母は存命。父が先に亡くなるシナリオで試算

この構成は、一般的な相続準備相談でもっともよく見られるパターンです。


ステップ1:財産の洗い出しと種類の分類

財産評価を始める前に、まず「何が財産に含まれるか」を種類別に整理します。

財産の種類 具体例 評価の難易度
不動産 自宅土地・建物、貸地、マンション 高(専門的な評価が必要)
金融資産 預貯金、株式、投資信託 低〜中(残高証明等で確認)
みなし相続財産 生命保険金、死亡退職金 低(証書・規定で確認)
その他 車、貴金属、骨董品など 中(時価が目安)

実務メモ:この時点で「財産が多い/少ない」を判断する必要はありません。まず種類と概算額を一覧にすることが目標です。


ステップ2:土地の評価額を拾う(路線価方式)

不動産の中でもっとも評価に迷いやすいのが土地です。居住用の土地は一般的に「路線価方式」で評価します。

路線価の調べ方(実務上の手順)

  1. 国税庁「財産評価基準書(路線価図)」にアクセスする
  2. 対象の地番・住所から路線価を確認する(単位:千円/㎡)
  3. 路線価 × 地積(㎡)× 補正率 = 評価額

【本事例での数値例】

  • 路線価:250千円/㎡(=25万円/㎡)
  • 地積:100㎡
  • 補正率:1.00(整形地のため)
  • 土地の評価額:25万円 × 100㎡ = 2,500万円

建物は固定資産税評価額がそのまま相続税評価額になります。固定資産税の納税通知書(毎年4〜6月ごろ送付)に記載の「家屋の評価額」を確認してください。

実務メモ:土地が不整形・傾斜地・旗竿地の場合は補正率が1.00より低くなり、評価額が下がることがあります。路線価図だけでは補正が反映されないため、形状の複雑な土地は専門家への確認が必要です。


ステップ3:預貯金・有価証券の確認

預貯金は相続開始時点(死亡日)の残高が評価額になります。生前準備の段階では、直近の残高を代替値として使います。

金融商品 評価のポイント 必要な書類
普通預金・定期預金 死亡日の残高(利息含む) 通帳・残高証明書
上場株式 死亡日の終値(または月平均額の低い方) 証券会社の取引明細
投資信託 死亡日の基準価額 × 口数 運用報告書・取引明細

【本事例での確認結果】

  • 銀行A(普通+定期):合計 1,800万円
  • 証券会社B(株式・投資信託):合計 400万円
  • 預貯金・有価証券の合計:2,200万円

ステップ4:生命保険金の取り扱い(みなし相続財産)

生命保険の死亡保険金は民法上の相続財産ではありませんが、相続税法上は「みなし相続財産」として課税対象に含まれます。ただし、非課税枠があります。

非課税限度額 = 500万円 × 法定相続人の数

【本事例での計算】

  • 法定相続人:母・長男・長女の3人
  • 非課税限度額:500万円 × 3人 = 1,500万円
  • 受取保険金:2,000万円
  • 課税対象となる保険金:2,000万円 − 1,500万円 = 500万円

実務メモ:非課税枠は「相続人が受け取った保険金」にのみ適用されます。受取人が相続人以外(例:内縁の配偶者など)の場合は全額が課税対象になるため、受取人の設定は早めに確認してください。


ステップ5:課税遺産総額の試算

ここまで拾った数値を使い、相続税の計算土台となる「課税遺産総額」を確認します(国税庁タックスアンサー No.4152)。

財産の集計

項目 金額
土地(路線価方式) 2,500万円
建物(固定資産税評価額) 800万円
預貯金・有価証券 2,200万円
みなし相続財産(課税対象分) 500万円
財産合計 6,000万円

基礎控除の確認

基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数

本事例:3,000万円 + 600万円 × 3人 = 4,800万円

判定

課税遺産総額:6,000万円 − 4,800万円 = 1,200万円(課税対象あり)

基礎控除を超えているため、この事例では相続税の申告が必要になる可能性があります。ただし、配偶者の税額軽減(No.4158)や小規模宅地等の特例(No.4124)を適用すると、実際の納税額が大幅に変わる場合があります。


条件が変わると試算はどう動くか

変更条件 財産合計への影響 コメント
土地に小規模宅地の特例を適用 最大80%減(330㎡まで) 居住用宅地の要件を満たせば大幅減
配偶者が法定相続分を相続 配偶者分は税額ゼロになる場合が多い 配偶者の税額軽減が強力な特例
生命保険の受取人が相続人以外 非課税枠が適用されず500万円増 受取人の見直しが節税に直結
名義預金が発覚した場合 財産合計に加算 子・孫名義の口座でも実態で判定される

同様ケースで注意すべきポイント

  • 路線価の更新タイミング:路線価は毎年7月初旬に改定されます。直前の年度のデータで試算した場合、最新年度と金額が異なることがあります。
  • 名義預金の論点:親が子の口座に移した資金でも、管理・運用を親が行っていた場合は相続財産とみなされるリスクがあります。
  • 農地・非上場株式:本事例では登場しませんでしたが、農地や同族会社の株式は評価方法が複雑で、専門家への確認が不可欠です。
  • 相続開始前3〜7年以内の贈与:相続前の贈与財産は相続税の課税対象に加算される場合があります(生前贈与加算)。贈与履歴がある場合は合わせて整理が必要です。

自分で進めやすい範囲と専門家への相談の境目

自分で確認できること 専門家への相談が望ましいこと
路線価の検索・概算計算 補正率の適用(不整形地・角地など)
預貯金残高の集計 名義預金の該当有無の判断
保険証書の受取人・金額確認 小規模宅地の特例の要件確認
基礎控除との大まかな比較 特例適用後の実際の納税額の試算

本記事は情報提供を目的として作成しており、特定の税務判断を推奨するものではありません。実際の税務処理・申告については、税理士等の専門家にご相談ください。個別事情によって結論が異なる場合があります。

相続税は、財産の種類や相続人の状況によって計算方法や特例の適用が大きく変わります。「うちの場合はどうなるか」を知りたい方は、早めに税理士へご相談されることをおすすめします。

毛利順活税理士事務所では、初回のご相談を無料で承っております。お気軽にお問い合わせください。

免責事項 本記事は情報提供を目的として作成しており、個別の税務アドバイスではありません。実際の税務判断・手続きについては、税理士等の専門家にご相談ください。税制は改正される場合があり、記事の内容が最新状況と異なることがあります。個別事情によって結論が異なる場合がありますので、必ずご自身の状況に合わせてご確認ください。

参考:国税庁タックスアンサー No.4152 相続税の計算

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