「売れ残った在庫は全部経費になる」は誤りです
確定申告の時期にメルカリセラーからよく聞くのが、「仕入れた商品は全部経費で落とせる」という認識です。
残念ながら、これは正しくありません。年末時点で売れずに手元に残っている商品(棚卸資産)は、その年の経費にはなりません。翌年以降に売れたときに初めて経費(仕入原価)として計上するのが正しい処理です。
この誤解のまま申告すると、利益を過少に申告することになり、税務調査で指摘されるリスクがあります。
なぜ誤解が生まれるのか
「仕入れた=お金が出ていった=経費」という感覚は自然ですが、税務上の経費(売上原価)は次の計算式で求めます。
売上原価 = 期首棚卸高 + 当期仕入高 - 期末棚卸高
つまり、年末に残っている在庫の金額(期末棚卸高)を差し引かなければなりません。仕入れた金額をそのまま全額経費にすると、原価が過大になり、利益が少なく計算されてしまいます。
誤解パターン別:何が問題でどう直すか
| よくある誤解 | 実際の正しい扱い | 放置した場合のリスク |
|---|---|---|
| 仕入れた商品はすべてその年の経費 | 売れた分だけが売上原価。年末在庫は棚卸資産として資産計上 | 所得の過少申告→加算税・延滞税の可能性 |
| 棚卸はざっくり数えればよい | 1点ずつ仕入単価を記録し、年末時点の数量×単価で計算 | 税務調査で根拠を示せず、否認されるリスク |
| 免税事業者は棚卸を気にしなくていい | 所得税の申告では免税・課税に関係なく棚卸処理は必要 | 利益計算がずれ、節税機会も正確に把握できない |
| 消費税の棚卸は関係ない(免税のうちは) | 課税事業者に切り替わる年は「棚卸資産に係る消費税の調整」が必要 | 仕入税額控除を取り損ねる |
実務上の処理:年末棚卸の手順
ステップ1:在庫の現物確認
年末(12月31日時点)に手元にある未販売商品をすべてリストアップします。メルカリの発送済み・未発送を確認し、発送済みはすでに売上、未発送・手元在庫は棚卸資産として扱います。
ステップ2:仕入単価の記録
1点ごとに「いくらで仕入れたか」を記録します。仕入れた際の領収書・明細が根拠になります。送料・手数料をどこまで含めるかは方針を決めて一貫させることが重要です。
ステップ3:期末棚卸高の集計
(商品ごとの仕入単価)×(年末時点の在庫数)を合計し、期末棚卸高として確定申告書(収支内訳書または青色申告決算書)に記入します。
ステップ4:課税事業者への切り替え時は消費税調整も確認
免税事業者から課税事業者になる年(課税売上が1,000万円を超えた翌々年など)には、免税期間中に仕入れた棚卸資産に含まれる消費税額を仕入税額控除に加算できる特例があります(消費税法第36条)。この処理を見落とすと、控除できるはずの消費税を取り損ねます。
実務メモ:免税事業者の判定は「基準期間(2年前)の課税売上高が1,000万円以下かどうか」で行います(国税庁タックスアンサー No.6501)。売上が伸びてきたセラーは毎年自分の判定区分を確認する習慣をつけましょう。
自分で対応できる範囲と専門家に相談すべき範囲
| 対応内容 | 自力で可能か |
|---|---|
| 在庫の現物確認・リストアップ | ○ 自力で対応可能 |
| 仕入単価の記録・集計 | ○ 表計算ソフトで管理可能 |
| 収支内訳書・青色決算書への記入 | △ 初年度は税務署の説明会や会計ソフトを活用 |
| 課税事業者切り替え時の棚卸消費税調整 | × 専門家への相談を推奨 |
| 大量仕入れ・複数プラットフォームの原価管理 | × 仕組み化を含め専門家と相談 |
まとめ:棚卸処理は「面倒な作業」ではなく「利益の正確な計算」
棚卸は単なる年末の作業ではなく、その年の利益を正確に把握するための基礎です。処理を省いたり概算で済ませたりすると、所得税の計算がずれるだけでなく、消費税の課税判定や仕入税額控除にも波及します。
在庫が少ないうちから正しい習慣を身につけておくことが、売上拡大期に慌てないための備えになります。
本記事は情報提供を目的として作成しており、特定の税務判断を推奨するものではありません。実際の税務処理・申告については、税理士等の専門家にご相談ください。個別事情によって結論が異なる場合があります。
せどり・転売の税務は、取引量が増えるほど判断が複雑になります。確定申告の時期に慌てないためにも、早めに税理士に相談しておくと安心です。
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