卸売業の委託販売・預け在庫、売上はいつ計上する?仕訳例で解説

卸売業の委託販売は受託者が販売した時点、預け在庫は得意先が使用・販売した時点が売上計上のタイミング。代金入金前でも売上に計上が必要な理由と仕訳例を具体的に解説します。

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得意先に商品を預けたまま年をまたいだとき、「代金はまだ受け取っていないのに今年の売上になるのか」と迷う方は少なくありません。卸売業特有の取引形態である委託販売や預け在庫は、通常の売買と売上計上のタイミングが異なります。

  • 委託販売は商品を送った時点ではなく、受託者が販売した時点で売上になる?
  • 預け在庫は得意先が使った瞬間に計上?それとも月次でまとめてよい?
  • 代金が入金される前に売上を立てなければいけないのはなぜ?

結論を先にお伝えすると、委託販売は「受託者が第三者に販売した日」、預け在庫は「得意先が実際に消費・販売した日」が売上計上のタイミングです。入金の有無は関係ありません。以下では業種の実態に即した仕訳例を交えながら確認します。

この記事でわかること

  • 委託販売・預け在庫それぞれの売上計上タイミングの判断基準
  • 具体的な仕訳例(日付・金額入り)
  • 年度をまたぐ場合の処理と、よくある間違いのパターン
  • 税理士に相談した方がよいケースの目安

まず原則を確認する

国税庁タックスアンサー No.2200「収入金額とその計算」は、次のように定めています。

その年において収入すべき金額は、年末までに現実に金銭等を受領していなくとも、「収入すべき権利の確定した金額」になります。

つまり売上は「入金日」ではなく「権利が確定した日」に計上します。委託販売や預け在庫でこの「権利が確定した日」がいつなのか——それが実務で迷いやすいポイントです。

委託販売の売上計上タイミング

原則:受託者の販売日が計上時期

委託販売とは、卸売業者(委託者)が商品を受託者(小売店など)に預け、受託者が第三者へ販売した代金から手数料を差し引いた残額を受け取る取引です。

この場合、委託者の売上が確定するのは、受託者が第三者に商品を販売した時点です。商品を発送した日でも、手数料精算書が届いた日でもありません。

具体例:日用品卸が小売店に委託販売するケース

【取引の前提】

  • 委託者(日用品卸)が小売店に商品(仕入原価80万円・販売委託価格100万円)を預ける
  • 小売店が11月末に第三者へ全量販売、手数料10万円を差し引いた90万円を翌年1月15日に振り込む
日付 内容 仕訳
10月1日 商品を小売店へ発送 (借)積送品 800,000 /(貸)仕入 800,000
11月30日 小売店が販売完了(売上確定) (借)積送売掛金 900,000 /(貸)売上 1,000,000
(借)支払手数料 100,000
1月15日 代金入金 (借)普通預金 900,000 /(貸)積送売掛金 900,000

10月1日時点では「積送品(預けた商品)」として資産計上するにとどめ、売上は立てません。売上を計上するのは11月30日——受託者が販売した日です。入金は翌年1月ですが、売上は当年(11月)に計上されます。

預け在庫の売上計上タイミング

原則:得意先が消費・使用した時点

業務用商品卸でよく見られる「預け在庫」は、得意先の倉庫や現場に商品を置いておき、使用した分だけ後から請求する取引形態です。販売した商品の所有権がいつ移転するかが、売上計上の鍵になります。

得意先が商品を消費・使用した時点で所有権が移転し、売上が確定します。物理的に商品が得意先の倉庫に入った日ではありません。

具体例:業務用洗剤を飲食チェーンに預けるケース

【取引の前提】

  • 洗剤卸が飲食チェーン本部の倉庫に洗剤(原価30万円・販売価格50万円)を搬入
  • 12月中に得意先が40万円分(原価24万円)を使用、残り10万円分は翌年に持ち越し
  • 請求書は翌年1月10日発行、入金は翌年1月末
日付 内容 仕訳
11月20日 倉庫へ搬入(所有権はまだ移転しない) (借)預け在庫 300,000 /(貸)商品 300,000
12月31日 12月使用分(40万円)の売上確定 (借)売掛金 400,000 /(貸)売上 400,000
(借)売上原価 240,000 /(貸)預け在庫 240,000
翌年1月末 代金入金 (借)普通預金 400,000 /(貸)売掛金 400,000

12月末時点で残っている10万円分は、翌年に得意先が使用するまで「預け在庫」のまま資産として残します。翌年の売上になります。

年度をまたぐときの実務チェック

年末の処理で特に注意が必要なのは次の点です。

確認項目 内容
委託販売の棚卸し 受託者から「販売済み数量の報告(仕切精算書)」を12月末時点で入手しているか
預け在庫の使用量確認 得意先から「12月中の使用量報告」をもらい、使用分を売上計上しているか
積送品・預け在庫の残高 期末の貸借対照表に正しく資産として残っているか
未到着の仕切精算書 翌年1月以降に届く精算書のうち、当年分の販売が含まれていないか確認

実務上は、受託者や得意先から月次報告書が届くのが翌月になるケースがよくあります。その場合でも、販売・使用が当年12月中に行われていれば、当年の売上として計上しなければなりません。

よくある間違いとその原因

間違い①:商品を発送した日に売上を立てる

委託販売で商品を受託者に送った日に売上計上するのは誤りです。この段階では所有権はまだ委託者にあり、「受託者の倉庫に預けた自分の商品」に過ぎません。入金が先行する場合も同様で、入金日ではなく販売日が基準です。

なぜ間違えるか:通常の売買では「出荷日=売上計上日」が多いため、委託販売でも同じ感覚で処理してしまうことが原因です。

間違い②:仕切精算書の到着日を売上計上日にする

受託者から仕切精算書(販売結果報告書)が届いた日を売上日にするケースがあります。精算書が1月に届いた場合、前年12月の販売分を当年1月の売上にしてしまう誤りです。

精算書は「事実の報告」であり、売上が確定したのはあくまで受託者が販売した日です。

間違い③:預け在庫を全量「搬入日」に売上計上する

得意先倉庫への搬入日に全量を売上計上するのも誤りです。使用前の在庫の所有権は卸売業者側にあるため、搬入分を全て売上にすると売上の過大計上になります。

自分で確認できるチェックリスト

  • 委託販売の商品は「積送品」として資産計上し、売上は計上していないか(発送時点)
  • 受託者からの販売報告書を月次で受け取り、販売日ベースで売上を計上しているか
  • 預け在庫は「得意先の使用量」ベースで売上を立て、残量は資産に残しているか
  • 12月末時点の販売・使用分が翌年1月の精算書でしか確認できない場合、見越し計上を検討しているか
  • 期末の棚卸しで積送品・預け在庫の実残高を把握しているか

税理士に相談した方がいいケース

次のような状況では、自社での判断だけでなく専門家への確認をおすすめします。

  • 複数の受託者に商品を預けており、販売報告のタイミングがバラバラで整理できていない
  • 契約上「未使用品は返品可」となっており、売上確定時期の判断が難しい
  • 預け在庫の量が多く、年度末の使用量確認が得意先の協力なしにできない
  • 消費税の課税売上にも影響するため、正確な計上時期を確定したい
  • 過去の申告で発送日や入金日を売上計上日にしていた可能性があり、修正が必要かもしれない

よくある質問

受託者からの販売報告が翌月になる場合、見越し計上は必要ですか?

12月中に販売が行われていた事実が確認できる場合は、当年の売上として見越し計上が必要です。報告書の受領が翌年1月でも、販売日が当年であれば当年分の収入として扱います。概算でも計上し、確定後に修正する方法が実務上は多く取られます。

預け在庫の契約で「月末締め翌月請求」としている場合、売上は月末?

契約や商慣習で締め日を定めている場合、その締め日(月末)を売上確定日として扱うことが認められる場合があります。ただし、実際の使用日と締め日の差が大きい(たとえば12月使用分を翌年2月締めにしているなど)場合は、税務上の問題になることがあるため注意が必要です。

委託販売で返品が発生した場合の処理は?

受託者が第三者へ販売した後に返品があった場合は、その返品時点で売上のマイナス(売上返品)として処理します。受託者の手元に戻っただけで第三者への販売が取り消されていない場合は、売上のマイナスにはなりません。

まとめ

取引形態 売上計上のタイミング 間違えやすいポイント
委託販売 受託者が第三者に販売した日 発送日・入金日・精算書到着日は不可
預け在庫 得意先が消費・使用した日 搬入日・請求書発行日・入金日は不可

国税庁タックスアンサー No.2200 が示すとおり、売上は「収入すべき権利が確定した時点」で計上します。委託販売なら受託者の販売日、預け在庫なら得意先の使用日——いずれも入金とは切り離して考えることが基本です。年末の棚卸しの際には、受託者・得意先から当年中の販売・使用実績を確認し、漏れなく当年分の売上に計上することが大切です。


本記事は情報提供を目的として作成しており、特定の税務判断を推奨するものではありません。実際の税務処理・申告については、税理士等の専門家にご相談ください。個別事情によって結論が異なる場合があります。


卸売業では、返品値引・廃棄ロス・委託販売・在庫管理など、取引条件によって処理が変わる論点があります。継続取引のルールを整えたい場合は、税理士への相談がおすすめです。

毛利順活税理士事務所では、初回のご相談を無料で承っております。お気軽にお問い合わせください。

免責事項 本記事は情報提供を目的として作成しており、個別の税務アドバイスではありません。実際の税務判断・手続きについては、税理士等の専門家にご相談ください。税制は改正される場合があり、記事の内容が最新状況と異なることがあります。個別事情によって結論が異なる場合がありますので、必ずご自身の状況に合わせてご確認ください。

参考:国税庁タックスアンサー No.2200 収入金額とその計算

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