卸売業の棚卸・在庫評価はどうする?具体的な仕訳と実務手順を解説

卸売業の棚卸では「期末の在庫金額をどう計算するか」が利益に直結します。主な評価方法(移動平均法・先入先出法)と期末棚卸の仕訳・廃棄ロスの処理を具体例で解説します。

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この記事でわかること

卸売業では、期末に「手元にある商品の金額」を正確に把握しないと、売上原価が正しく計算できません。この記事では、在庫評価方法の選び方・棚卸の実務手順・典型的な仕訳例を具体的に解説します。


卸売業の棚卸が重要な理由

卸売業の損益は、次の算式で決まります。

売上原価 = 期首在庫 + 当期仕入 − 期末在庫

期末在庫の金額が大きければ売上原価は小さくなり(利益が増え)、小さければ売上原価は大きくなります。棚卸の精度が、そのまま利益の精度に影響します。

国税庁タックスアンサー No.2210「やさしい必要経費の知識」でも、必要経費(売上原価)の計算に棚卸高が必要であることが明示されています。


主な在庫評価方法と卸売業での使い分け

評価方法 考え方 卸売業での特徴
移動平均法 仕入のたびに平均単価を再計算 仕入頻度が高い・品種が多い場合に管理しやすい
先入先出法(FIFO) 古い在庫から順に払い出したとみなす 実際の在庫フローと合いやすい。原価上昇局面で利益が出やすい
最終仕入原価法 期末直前の仕入単価で全在庫を評価 計算が最も簡便。個人事業者の法定評価方法(届出なし)

個人事業者が届出なしで申告する場合、法定評価方法は「最終仕入原価法」です。別の方法を使いたい場合は、税務署への届出が必要です(棚卸資産の評価方法の届出書)。法人の場合は「移動平均法または総平均法」が法定評価方法です。


棚卸の実務手順(年度末の流れ)

  1. 実地棚卸の実施:期末時点で実際に倉庫・商品を数え、数量を確認する
  2. 在庫リストの作成:品番・数量・単価を一覧化する
  3. 評価単価の決定:採用している評価方法(最終仕入原価法など)で単価を確定する
  4. 期末在庫金額の計算:数量 × 評価単価 で商品ごとに合計する
  5. 仕訳への反映:期末棚卸高を計上する

具体的な仕訳例

ケース①:期末棚卸の計上

卸売業者が期末に商品在庫(最終仕入原価法)を計算したところ、300,000円だった場合。

決算整理仕訳(個人事業・青色申告の場合)

借方 金額 貸方 金額
繰越商品 300,000円 仕入 300,000円

翌期首には逆仕訳で期首在庫を仕入に戻します。

借方 金額 貸方 金額
仕入 300,000円 繰越商品 300,000円

ケース②:廃棄ロスの処理

仕入単価1,000円の商品10個(合計10,000円)が期末に品質劣化で廃棄となった場合。

借方 金額 貸方 金額
棚卸減耗損 10,000円 繰越商品 10,000円

廃棄した事実の記録(廃棄証明書・写真など)を保管しておくことで、税務上の経費として認められやすくなります。


卸売業ならではの注意点

  • 返品・値引きのタイミング:期末をまたいだ返品は、在庫数量と帳簿を両方修正する必要があります
  • 委託在庫の扱い:他社に預けている商品や、預かっている受託商品は「自社在庫か否か」を明確に区別します。自社所有でないものを在庫に含めると過大計上になります
  • 仕入計上漏れ:期末直前に到着した商品は、検収日・所有権移転日を基準に「仕入に計上するか」「在庫に含めるか」を判断します

自分で確認できるチェックリスト

確認項目 対応状況
実地棚卸の数量と帳簿残高が一致しているか
在庫評価方法を決め、税務署への届出の要否を確認したか
廃棄・返品の証拠書類を保管しているか
委託在庫と自社在庫を区別しているか
期末直前仕入の計上タイミングを確認したか

まとめ

卸売業の棚卸は「数える・単価を決める・仕訳に落とす」の3ステップが基本です。評価方法を届出なしで使っている場合は最終仕入原価法が適用されます。廃棄ロスや委託在庫など、卸売業特有の論点は処理を誤ると税務調査で指摘を受けやすいため、証拠書類の整備が大切です。


本記事は情報提供を目的として作成しており、特定の税務判断を推奨するものではありません。実際の税務処理・申告については、税理士等の専門家にご相談ください。個別事情によって結論が異なる場合があります。


卸売業では、返品値引・廃棄ロス・委託販売・在庫管理など、取引条件によって処理が変わる論点があります。継続取引のルールを整えたい場合は、税理士への相談がおすすめです。

毛利順活税理士事務所では、初回のご相談を無料で承っております。お気軽にお問い合わせください。

免責事項 本記事は情報提供を目的として作成しており、個別の税務アドバイスではありません。実際の税務判断・手続きについては、税理士等の専門家にご相談ください。税制は改正される場合があり、記事の内容が最新状況と異なることがあります。個別事情によって結論が異なる場合がありますので、必ずご自身の状況に合わせてご確認ください。

参考:国税庁タックスアンサー No.2210 やさしい必要経費の知識

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