相続時精算課税の年110万円控除(2024年新設)|暦年贈与とどう使い分ける?

2024年から相続時精算課税にも年110万円の基礎控除が創設されました。暦年贈与との違い、7年加算の影響、有利不利の分かれ目を比較して判断しやすく整理しています。

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相続時精算課税の年110万円控除が2024年から新設され、贈与の選び方は以前より複雑になりました。この記事を読めば、相続時精算課税と暦年贈与のどちらが自分に合うか、基本ルールから判断できるようになります。

この記事は、親や祖父母から子や孫への生前贈与を考えている方に向けたものです。特に「毎年少しずつ贈与したい」「将来の相続税も気になる」という方は、改正後の違いを押さえておくことが大切です。

相続時精算課税の年110万円控除と暦年贈与の違い

まず、比較対象を整理します。

  • 相続時精算課税制度
    一定の親族間で選択できる贈与制度です。累計2,500万円までの特別控除があり、それを超える部分には原則20%の贈与税がかかります。選択後はその贈与者について暦年課税へ戻れません。2024年以後は、毎年110万円の基礎控除が設けられ、この110万円以下は贈与税の申告不要で、相続時の加算対象にもなりません(国税庁タックスアンサー No.4103)。

  • 暦年課税による贈与(いわゆる暦年贈与)
    1年間(1月1日〜12月31日)に受けた贈与の合計額から、受贈者ごとに年110万円の基礎控除を差し引いて贈与税を計算する一般的な方法です。ただし、相続開始前の一定期間内の贈与は相続財産に加算されます。2024年以後の贈与からは、加算期間が3年から7年へ延長されています(国税庁タックスアンサー No.4408)。

比較表で見る結論

項目 相続時精算課税 暦年贈与
正式な制度 相続時精算課税制度 暦年課税
年110万円控除 あり(2024年新設) あり
2,500万円の特別控除 あり なし
相続時の扱い 110万円超部分は原則として相続財産に加算 相続開始前7年以内の贈与は加算対象
一度選んだ後 同じ贈与者について暦年課税へ戻れない 毎年通常どおり判定
向いているケース 早めに大きな財産を移したい、値上がりが見込まれる財産を渡したい 毎年少額を柔軟に贈与したい、制度を固定したくない
デメリット 選択後の後戻り不可、相続時の精算が必要 7年加算の影響を受けやすい

改正後はどちらが有利かを分ける判断軸

結論からいうと、毎年110万円以下を長く贈与したいだけなら、まずは暦年贈与で足りることが多いです。
一方で、110万円を超える贈与を早めに行いたい、将来値上がりしそうな財産を移したい場合は、相続時精算課税が有力です。

判断軸は主に次の4つです。

1. 贈与額が年110万円以内か、それを超えるか

110万円以内なら、どちらの制度でも贈与税申告が不要となる場面があります。
ただし、相続時精算課税を選ぶ意味が出てくるのは、110万円を超える贈与をしたいときです。たとえば教育資金や住宅取得資金とは別に、まとまった現金を渡したい場合です。

2. 相続までの期間が長いか、短いか

暦年贈与は相続開始前7年以内の贈与が加算対象になります。したがって、高齢で相続が近い可能性がある場合、以前より「少しずつ贈与すれば完全に相続税対策になる」とは言いにくくなりました。
この点、相続時精算課税はもともと相続時に精算する制度なので、早い段階で制度の前提が明確です。

3. 何を贈与するか

現金だけでなく、自社株や収益不動産、将来値上がりが見込まれる資産は考え方が変わります。相続時精算課税では、贈与時の価額で相続時に精算するのが原則です。将来大きく値上がりする前に移転できれば、有利になる場合があります。実務上、ここは制度選択の大きな分かれ目です。

4. 制度を固定したくないか

相続時精算課税は、一度選択すると同じ贈与者について暦年課税に戻れません。
今後の資金計画や家族関係がまだ固まっていない場合は、柔軟性の高い暦年贈与の方が扱いやすいことがあります。

数値シミュレーション:どちらが有利になりやすいか

ケース1:毎年100万円を10年間贈与する場合

条件 相続時精算課税 暦年贈与
年間贈与額 100万円 100万円
毎年の贈与税 0円 0円
申告 原則不要 原則不要
相続時の扱い 110万円以下なので加算なし 相続前7年分は加算対象になる可能性あり

このケースでは、相続がまだかなり先なら暦年贈与でも大きな差が出にくいです。
ただし、相続が近い場合は直近7年分が相続財産に戻るため、改正前より暦年贈与のメリットは小さくなっています。

ケース2:今年1,000万円を一括で贈与したい場合

条件 相続時精算課税 暦年贈与
贈与額 1,000万円 1,000万円
控除 110万円+2,500万円枠の範囲内 110万円のみ
当年の贈与税 原則0円 高額になりやすい
相続時 110万円超部分は相続時に精算 7年加算の対象になり得る

この場合は、相続時精算課税の方が使いやすいことが多いです。暦年課税で1,000万円を一度に贈与すると、贈与税負担が重くなりやすいためです。

相続時精算課税と暦年贈与の使い分けフローチャート

以下を目安にしてください。

  1. 贈与額は年110万円以下ですか?

    • はい → 次へ
    • いいえ → 相続時精算課税をまず検討
  2. 制度を固定せず柔軟に続けたいですか?

    • はい → 暦年贈与が向きやすい
    • いいえ → 次へ
  3. 相続が比較的近い、または7年加算の影響が気になりますか?

    • はい → 相続時精算課税も比較対象に入れる
    • いいえ → 暦年贈与が向きやすい
  4. 将来値上がりしそうな財産を渡しますか?

    • はい → 相続時精算課税が向く場合あり
    • いいえ → 少額なら暦年贈与で足りることが多い

判断を誤った場合のリスクと修正のしにくさ

一番注意したいのは、相続時精算課税は選択後に戻せないことです。選択には「相続時精算課税選択届出書」の提出が必要で、提出後はその贈与者からの贈与について暦年課税へ変更できません(国税庁タックスアンサー No.4103)。

実務上は、次のような誤りが起きやすいです。

  • 110万円控除ができたので「相続時精算課税の方が常に有利」と考えてしまう
  • 暦年贈与の7年加算だけを見て、制度の柔軟性を軽視してしまう
  • 不動産や自社株の評価変動を見落として選択してしまう

修正が難しいため、現金を少額ずつ渡すだけなのか、将来の相続全体を見据えて財産移転するのかを先に整理することが重要です。

実務での選び方

自力で判断しやすいのは、次のようなケースです。

  • 毎年110万円以下の現金贈与を考えている
  • 贈与する財産が現金中心で、評価が変動しにくい
  • まずは家族内で無理のない範囲で進めたい

一方、次のような場合は専門家に相談した方が安全です。

  • 今年中に数百万円〜数千万円単位の贈与を考えている
  • 不動産、自社株、投資資産など評価が動く財産がある
  • 将来の相続税申告も見据えて全体設計したい
  • 小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減も絡みそうである
    こうした相続税全体の計算は、国税庁タックスアンサー No.4152No.4124No.4158 も確認しながら検討することになります。

まとめ

2024年改正で、相続時精算課税にも年110万円控除が入り、以前より使いやすくなりました。
ただし、少額を柔軟に贈与するなら暦年贈与、まとまった財産や値上がりが見込まれる財産を早めに移すなら相続時精算課税という基本は、今も大きくは変わりません。

迷いやすいのは、「110万円控除が同じならどちらでも同じではないか」という点です。実際には、7年加算、2,500万円枠、後戻りの可否、財産の種類で結論が変わります。制度そのものではなく、相続まで含めた全体像で選ぶことが大切です。

本記事は情報提供を目的として作成しており、特定の税務判断を推奨するものではありません。実際の税務処理・申告については、税理士等の専門家にご相談ください。個別事情によって結論が異なる場合があります。

相続税は、財産の種類や相続人の状況によって計算方法や特例の適用が大きく変わります。「うちの場合はどうなるか」を知りたい方は、早めに税理士へご相談されることをおすすめします。
毛利順活税理士事務所では、初回のご相談を無料で承っております。お気軽にお問い合わせください。

免責事項 本記事は情報提供を目的として作成しており、個別の税務アドバイスではありません。実際の税務判断・手続きについては、税理士等の専門家にご相談ください。税制は改正される場合があり、記事の内容が最新状況と異なることがあります。個別事情によって結論が異なる場合がありますので、必ずご自身の状況に合わせてご確認ください。

参考:国税庁タックスアンサー 相続時精算課税の選択

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