一人親方の確定申告、何をどう準備する?必要書類と手順を解説

一人親方は所得が基礎控除額(令和8年分は104万円)を超えると確定申告が必要。請求書・領収書・源泉徴収票を揃え、白色または青色申告で申告する手順を解説します。

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現場の仕事が一段落して、「そういえば確定申告、どうすればいいんだろう」と手が止まる方は少なくありません。

  • 一人親方でも確定申告が必要なのか?
  • 白色申告と青色申告、どちらを選べばいい?
  • 必要な書類は何を用意すればいい?
  • 申告していない年があるが、今からでも間に合うか?

これらの疑問に、建設業の一人親方という立場に寄り添って答えていきます。結論から言うと、一人親方は原則として確定申告が必要で、収入から経費を引いた所得が基礎控除額を超えれば申告義務が生じます。令和8年分の基礎控除は104万円です。必要書類をそろえて手順どおりに進めれば、初めての方でも対応できます。

この記事でわかること

  • 一人親方に確定申告が必要な理由と義務が生じる基準
  • 白色申告・青色申告の違いと選び方
  • 用意すべき書類の一覧
  • 申告の具体的な手順(スマホ対応含む)
  • よくある間違いと未申告の場合の対処法

一人親方は確定申告が必要か

一人親方は会社員と違い、勤務先が税金を代わりに納める「年末調整」の対象外です。自分で1年間の収入と経費を計算して税務署に申告し、所得税を納める必要があります。これが確定申告です。

義務が生じる基準は、所得(売上から必要経費を引いた額)が所得控除の合計額を超えるかどうかです(国税庁タックスアンサー No.2020「確定申告」)。その所得控除の中心になるのが基礎控除で、令和8年分は104万円。年間の受注額が小さくても、経費を引いた後の所得がこれを超えていれば申告が必要です。逆に、経費が多く所得がそれ以下に収まる年は申告義務がない場合もあります。

この金額はここ数年で続けて変わっています。よく見かける「48万円」は令和6年分以前の金額で、いまの判断には使えません。令和7年分は95万円、令和8年分は104万円です。

なお実際には、基礎控除のほかに国民健康保険料・国民年金保険料などの社会保険料控除も差し引けます。申告が必要になる所得のラインは、104万円よりさらに高くなるのが普通です。

元請けから源泉徴収されている場合でも、確定申告で精算しなければ払い過ぎた税金が戻ってきません。申告することで還付を受けられるケースも多くあります。

白色申告と青色申告、どちらを選ぶか

確定申告には「白色申告」と「青色申告」の2種類があります。どちらも同じ確定申告の枠組みですが、帳簿の作り方と税務上の優遇が異なります。

項目 白色申告 青色申告(簡易簿記) 青色申告(複式簿記)
事前の届出 不要 必要(青色申告承認申請書) 必要(同左)
帳簿の複雑さ 比較的簡単 やや複雑 複雑
青色申告特別控除 なし 10万円 最大65万円(e-Tax利用の場合)
赤字の繰越 不要 3年間繰越可能 3年間繰越可能
専従者給与の必要経費算入 上限あり 上限なし 上限なし

今年が初めての申告、あるいは届出を出していないなら白色申告になります。帳簿は比較的シンプルで、収入と経費を記録した「収支内訳書」を作成して申告書に添付します(国税庁「白色申告者の記帳・帳簿等保存制度」)。

青色申告を選ぶには、原則として申告する年の3月15日まで(新規開業の場合は開業後2か月以内)に「青色申告承認申請書」を税務署に提出しておく必要があります。まだ提出していない場合、令和8年分は白色申告で対応し、令和9年分から青色申告に切り替える流れになります。

売上が毎年安定していて帳簿をきちんとつけられる方は、青色申告の65万円控除を目指す価値があります。所得から65万円を追加で差し引けるため、税負担が大きく変わります。

確定申告に必要な書類

書類の準備不足が原因で申告がストップするケースは非常に多いです。以下を1〜2月中に揃えておくとスムーズです。

書類 内容・入手先
請求書の控え・入金記録 自分で発行・保管しているもの
領収書・レシート(経費分) 材料費・ガソリン代・工具代など
源泉徴収票または支払調書 元請けから受け取る。発行されていない場合は確認を
国民健康保険料の納付記録 市区町村から届く「納付済額のお知らせ」等
国民年金保険料の控除証明書 日本年金機構から10〜11月ごろ郵送される
一人親方労災保険料の領収書 団体経由で加入している場合
マイナンバーカードまたは通知カード+身分証 本人確認に使用
銀行口座情報 還付がある場合の振込先

源泉徴収票は元請けが発行義務を持ちますが、発行されていないケースも実務では起こります。その場合は「支払調書」で代用できることがあるので、元請けに確認してください。

申告書の作成手順

【手順①】収入と経費を集計する

1年間の請負収入の合計を出します。請求書の控えや通帳の入金履歴を使って、月ごとに合計していくと漏れが防げます。

次に経費をまとめます。建設業の一人親方で経費になる主なものは以下のとおりです。

  • 材料費・消耗品費(現場で使う資材など)
  • 外注費(下請けへの支払い)
  • 工具・機械の購入費または減価償却費
  • ガソリン代・高速道路代(仕事用)
  • 作業着・安全靴などの被服費(仕事専用のもの)
  • 携帯電話代(仕事に使う割合分)
  • 一人親方労災保険料

自宅を事務所として使っている場合は家賃・光熱費の一部を経費にできますが、仕事に使う割合(按分)の根拠を説明できるようにしておく必要があります。

【手順②】収支内訳書(白色)または青色申告決算書を作成する

白色申告の場合は「収支内訳書(営業等用)」に収入・経費の内訳を記入します。国税庁の確定申告書等作成コーナー(e-Tax)を使えば、画面の指示に沿って入力するだけで自動計算されます。

青色申告の場合は「青色申告決算書」を作成します。帳簿(現金出納帳・売掛帳など)の記録をもとに作成します。

【手順③】確定申告書に転記して提出する

収支内訳書や決算書で計算した事業所得の金額を確定申告書(第一表・第二表)に転記します。社会保険料控除(国民健康保険・国民年金)や生命保険料控除なども忘れずに記入してください。

提出方法は3つあります。

  • e-Tax(インターネット): マイナンバーカードとスマホ・PCで申告。還付が早い。
  • 税務署窓口への持参: 担当者に確認しながら提出できる。
  • 郵送: 控えに収受印が欲しい場合は返信封筒を同封する。

スマホで申告する場合は、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」にアクセスし、マイナンバーカードとスマホのNFCリーダー機能を使って本人確認・送信ができます。手書き書類を用意しなくて済むため、初めての方にも使いやすい方法です。

よくある間違いと注意点

「源泉徴収されているから申告しなくていい」は誤りです。元請けが10%の源泉徴収をしていても、それはあくまで仮の納税です。実際の税額と差額がある場合は、確定申告で精算する必要があります。特に経費が多い方は申告することで還付になるケースが多くあります。

外注費を「給与」として処理してしまうのも要注意です。一人親方への支払いは外注費(消費税の仕入税額控除の対象)ですが、実態が「指揮命令下の労働」であれば給与と認定されることがあり、消費税・所得税の取り扱いが変わります。元請けから外注費扱いで支払われていても、実態を正しく把握しておくことが大切です。

経費の領収書を捨ててしまうのも典型的な失敗です。白色申告でも、収入金額や経費の記録・証憑は5年間保存する義務があります(国税庁「白色申告者の記帳・帳簿等保存制度」)。スマホで撮影してクラウドに保存する習慣をつけると管理が楽になります。

確定申告していない年がある場合

「去年(一昨年)の申告をしていなかった」と気づいた場合でも、過去5年分(加算税・延滞税あり)は後から申告できます。これを「期限後申告」と呼びます。

税務署から調査が入る前に自分から申告(自主申告)すれば、ペナルティが軽減される場合があります。逆に調査後の申告になると加算税が重くなるため、気づいた時点で早めに動くことが重要です。未申告期間が複数年にわたる場合や、金額が大きい場合は税理士に相談して整理することをお勧めします。

自分で確認できるチェックリスト

申告前にこの項目を確認してください。

  • 1年間の請負収入を請求書・通帳で確認した
  • 経費の領収書・レシートをまとめた
  • 源泉徴収票または支払調書を元請けから受け取った
  • 国民年金保険料控除証明書を手元に用意した
  • 国民健康保険料の年間納付額を確認した
  • 白色・青色のどちらで申告するか決めた
  • マイナンバーカードを手元に用意した(e-Tax利用の場合)
  • 申告期限(原則3月15日)を確認した

税理士に相談した方がいいケース

次のような状況では、ご自身だけで判断するより専門家に確認することをお勧めします。

  • 未申告の年が2年以上ある
  • 外注費・給与の区分が曖昧な取引がある
  • 売上が急増し、消費税の納税義務が生じるか不安
  • 自宅兼事務所の按分や車両費の経費処理に迷っている
  • 青色申告に切り替えたいが帳簿の付け方がわからない
  • 元請けが源泉徴収票を発行してくれない

よくある質問

売上がいくらなら確定申告が不要ですか?

事業所得(売上から必要経費を差し引いた金額)が基礎控除額以下であれば申告は不要です。令和8年分の基礎控除は104万円です。ただし売上金額ではなく所得金額が基準なので、経費が多い場合は売上が高くても申告不要になることがあります。社会保険料控除など他の所得控除も差し引けるため、実際のラインはこれより高くなります。

スマホだけで申告を完結できますか?

マイナンバーカードとNFC対応スマホがあれば、e-Taxを使ってスマホだけで申告できます。国税庁の「確定申告書等作成コーナー」から画面の指示に沿って入力・送信できます。源泉徴収票の情報入力などもスマホ上で行えます。

元請けに源泉徴収票を発行してもらえない場合はどうなりますか?

元請けには支払調書の発行義務があります。発行されない場合は、通帳の入金記録や請求書の控えで収入金額を把握し、申告書に記載します。支払調書なしでも申告は可能ですが、後日税務署から確認が入るケースもあるため、証拠書類は丁寧に保管してください。

青色申告に切り替えるには何をすればいいですか?

青色申告は適用を受けたい年の3月15日までに「所得税の青色申告承認申請書」を税務署に提出します。たとえば令和9年分から青色申告にしたい場合は、令和9年3月15日までの提出です(その年の1月16日以後に新たに開業した場合は、開業から2か月以内)。e-Taxでも提出できます。

まとめ

一人親方は年末調整がないため、毎年自分で確定申告を行う必要があります。事業所得(収入-経費)が基礎控除額を超えれば申告義務が生じます。令和8年分の基礎控除は104万円です。

まず白色申告か青色申告かを決め、請求書・領収書・源泉徴収票・社会保険料の控除証明書を揃えてから申告書を作成します。e-Taxを使えばスマホからでも申告でき、還付がある場合は入金も早まります。

未申告の年がある場合は放置せず、できるだけ早く対応してください。自主申告はペナルティの軽減につながります。


本記事は情報提供を目的として作成しており、特定の税務判断を推奨するものではありません。実際の税務処理・申告については、税理士等の専門家にご相談ください。個別事情によって結論が異なる場合があります。

一人親方の税務は、外注か給与かの判定、工具や材料費、源泉徴収、帳簿管理など実務上の確認点が多くあります。現場ごとの契約形態に不安がある場合は、税理士に相談しておくと安心です。

毛利順活税理士事務所では、初回のご相談を無料で承っております。お気軽にお問い合わせください。

免責事項 本記事は情報提供を目的として作成しており、個別の税務アドバイスではありません。実際の税務判断・手続きについては、税理士等の専門家にご相談ください。税制は改正される場合があり、記事の内容が最新状況と異なることがあります。個別事情によって結論が異なる場合がありますので、必ずご自身の状況に合わせてご確認ください。

参考:国税庁タックスアンサー No.2020 確定申告

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