居住用賃貸建物の仕入税額控除は原則できない|ケース別の判断ポイントと例外

居住用賃貸建物の取得に係る消費税は原則として仕入税額控除が認められない。ただし住居と事業用の混在物件や、転用・譲渡時の調整など例外もあり、ケース別の判断が必要。

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居住用賃貸建物の仕入税額控除、「できない」だけでは終わらない話

不動産を取得したときの消費税の扱いは、一見シンプルに見えて判断が割れやすい領域です。特に「居住用として貸し出す建物」に関しては、2020年10月の消費税法改正により仕入税額控除が原則として制限されています。ただし「全部ダメ」ではなく、用途や条件によって結論が変わります。

原則

消費税法第30条第10項の規定により、居住用賃貸建物(税抜取得価額1,000万円以上)の取得に係る消費税は、原則として仕入税額控除の対象外です。居住用の家賃収入は消費税が非課税であるため、その収入を生む建物の購入にかかる消費税を控除することは認められていません(国税庁タックスアンサー No.6451)。


ケース別の判断ポイント

以下の4ケースで結論がどう変わるかを整理します。

ケース 取得時の控除 条件・注意点
純粋な居住用賃貸(マンション全室を家賃貸し) 不可 原則どおり。還付申告しても認められない
店舗兼住居の混在物件(1Fが店舗、2F以上が住居) 按分で一部可 床面積等で合理的に区分し、店舗部分に対応する消費税のみ控除可
取得後3年以内に課税用途へ転用(事務所等として賃貸) 転用時に調整で一部控除可 消費税法第35条の2による調整計算が必要
取得後3年以内に譲渡した場合 譲渡時に調整で一部控除可 同上。譲渡対価が課税売上になるケースで適用

混在物件の判断:どこで線を引くか

住居と店舗が同じ建物に混在している場合、取得時にどう区分するかが実務のカギです。

一般的な区分の方法としては、床面積比が使われます。たとえば、総床面積200㎡のうち1Fの店舗部分が50㎡なら、取得にかかる消費税のうち50/200(25%)を課税売上対応として控除できる、という考え方です。

ただし、この按分は「合理的な基準」でなければ税務署に否認される可能性があります。実務では床面積比のほか、賃料収入比・使用実態に応じた区分も検討しますが、選択した基準の根拠を書面で残しておくことが重要です。


3年以内の転用・譲渡時の調整

取得時に控除できなかった建物でも、取得後3年以内に課税売上対応の用途に転用したり、課税対象として譲渡したりした場合は、消費税法第35条の2に基づく「仕入れに係る消費税額の調整」が発生します。

この調整により、転用・譲渡した事業年度において一定の仕入税額控除が認められる場合があります。逆に言えば、取得から3年を超えてしまうと調整の機会が失われるため、転用・売却を検討しているなら時期の確認が必要です。


間違えやすいポイント

  • 1,000万円未満の建物は対象外:税抜取得価額が1,000万円未満の居住用賃貸建物は、この制限の対象になりません。ただし高額特定資産(税抜1,000万円以上)の取得は別途の規制(No.6502)とも絡むため注意が必要です。
  • 簡易課税選択者は関係ない:簡易課税制度を選択している場合、実際の仕入税額を計算しないため、この制限は実質的に関係しません(No.6505)。
  • 取得後すぐの用途が重要:取得時点の用途が「居住用」かどうかで判断するため、「将来は事業用にする予定」という主張だけでは控除は認められません。

自分のケースを確認するチェックリスト

  • 取得した(する予定の)建物の税抜価額は1,000万円以上か
  • 建物の用途は「住居」「店舗・事務所」「混在」のどれか
  • 混在の場合、床面積など合理的な区分基準を用意できるか
  • 取得後3年以内に課税用途への転用や譲渡の予定はあるか
  • 現在、簡易課税制度を選択しているか

税理士に相談した方がいいケース

  • 住居・事業用の混在割合が曖昧で按分基準に迷っている
  • 取得から3年以内に転用・売却を検討しており、調整計算が必要
  • 高額特定資産の取得と納税義務免除の特例が重なる可能性がある
  • インボイス登録の有無と合わせた総合的な消費税の設計が必要

まとめ

居住用賃貸建物の取得に係る消費税は、原則として仕入税額控除が認められません。ただし、店舗兼住居の混在物件では床面積等による按分が認められる場合があり、取得後3年以内の転用・譲渡では調整計算によって一部の控除が発生します。「建物の用途」「1,000万円ラインの確認」「3年以内の転用予定の有無」の3点を軸に、まず自分のケースがどこに当てはまるかを確認してみてください。


本記事は情報提供を目的として作成しており、特定の税務判断を推奨するものではありません。実際の税務処理・申告については、税理士等の専門家にご相談ください。個別事情によって結論が異なる場合があります。

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免責事項 本記事は情報提供を目的として作成しており、個別の税務アドバイスではありません。実際の税務判断・手続きについては、税理士等の専門家にご相談ください。税制は改正される場合があり、記事の内容が最新状況と異なることがあります。個別事情によって結論が異なる場合がありますので、必ずご自身の状況に合わせてご確認ください。

参考:国税庁タックスアンサー No.6451 仕入税額控除の対象範囲

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