事業承継で家族が確認すべき税務のポイント|比較して考えるポイント

事業承継の方法は「相続・贈与・売却(M&A)」の3つに大別され、税負担・後継者への影響・タイミングが大きく異なります。生前準備期に選択肢を比較し、早めに判断軸を持つことが重要です。

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この記事でわかること

事業を持つ方が亡くなる前に「誰に・どうやって事業を引き継がせるか」を考える際、選択肢によって税負担も手続きも大きく変わります。

この記事では、事業承継の主な3つの方法(相続・贈与・売却)を税務の観点から比較し、生前準備期にどの方向で検討すべきかの判断軸を整理します。すでに事業を経営している方、またはご両親の事業継承について考え始めているご家族の方に向けた内容です。


事業承継の方法は大きく3つある

事業承継の手段は、大きく次の3つに分けられます。

方法 概要 主な税目
① 相続による承継 オーナーの死亡後に事業用財産を引き継ぐ 相続税
② 贈与による承継 生前に株式・事業用財産を後継者へ贈与する 贈与税(相続時精算課税含む)
③ 売却(M&A等)による承継 第三者または後継者に事業・株式を売却する 譲渡所得税・法人税等

どの方法が最適かは、事業の形態(個人事業か法人か)・後継者の有無・財産の規模・タイミングによって異なります。「税金が安い方法を選べばよい」という単純な話ではなく、後継者が実際に事業を継続できるかどうかという実務的な観点も同時に必要です。


3つの方法を税務で比較する

① 相続による承継

オーナーが亡くなった後、事業用の財産(土地・建物・株式・機械設備など)を相続人が引き継ぐ方法です。

相続税は、遺産の総額から基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を差し引いた金額に対して課税されます(国税庁タックスアンサー No.4152「相続税の計算」)。税率は10〜55%の累進課税です。

相続承継のメリット・デメリット

観点 内容
メリット 生前に手続き不要。小規模宅地等の特例が使えるケースがある(No.4124
デメリット 相続発生まで確定しないため、後継者が準備できないリスクがある
注意点 事業用財産の評価額が高いと、納税資金の確保が課題になる

実務メモ: 事業用の土地は「特定事業用宅地等」として、一定の要件を満たせば評価額を最大80%減額できる場合があります(小規模宅地等の特例、No.4124)。ただし、相続後も引き続き事業を継続することが要件となるため、承継が不確実な場合は適用できないことがあります。


② 贈与による承継

生前に後継者へ株式や事業用財産を贈与する方法です。計画的に進めやすく、後継者が早期に経営に関与できるというメリットがあります。

贈与税には「暦年課税」と「相続時精算課税」の2つの課税方式があります。

贈与の課税方式の比較

課税方式 概要 非課税枠 特徴
暦年課税 毎年110万円の基礎控除 年間110万円 少額を毎年コツコツ贈与するのに向く
相続時精算課税 累計2,500万円まで贈与税非課税(相続時に精算) 2,500万円(累計) 大型財産の移転に使いやすいが、相続時に加算される

実務メモ: 2024年(令和6年)1月1日以降、相続時精算課税制度に年間110万円の基礎控除が新設されました。この基礎控除の範囲内であれば、相続時の加算対象にもなりません。制度改正の影響が大きい論点のため、最新の情報を税理士に確認することをおすすめします。

また、非上場株式の贈与については「非上場株式等についての贈与税の納税猶予及び免除(事業承継税制)」が適用できる場合があります。要件を満たせば贈与税の全額が猶予・免除となる可能性がありますが、適用要件や手続きが複雑であるため、専門家への相談が不可欠です。


③ 売却(M&A等)による承継

後継者に売却する場合も、第三者(他社や投資家)に売却する場合も、法人株式の売却であれば譲渡所得として課税されます。個人が保有する非上場株式を売却した場合、原則として申告分離課税(税率約20.315%)が適用されます。

観点 内容
メリット 後継者がいない場合でも事業を存続させられる。現金が手元に入る
デメリット 相手先の選定・交渉・契約など手続きが複雑。時間がかかる
税務上の注意 株式の譲渡益に課税。取得価額の証明が必要

実務メモ: 株式の取得価額が不明な場合、売却価額の5%を取得費とみなして計算することがあります(概算取得費)。これにより税負担が大きくなるケースがあるため、株式の取得時の記録を事前に整理しておくことが重要です。


どの方法が自分の状況に向くか?判断フロー

以下のフローで、おおまかな方向性を確認してください。

後継者はいますか?
 ├── いる → 後継者に引き継ぐ方向で検討
 │     ├── 今すぐ引き継ぎたい → 贈与(事業承継税制の活用も検討)
 │     └── 亡くなった後でよい → 相続(遺言書の整備と納税資金の準備)
 └── いない → 第三者への売却(M&A)を検討
        └── 早めに動き出すことが重要(相手探しに時間がかかる)

生前準備期に確認しておきたい5つのポイント

生前準備の段階で、以下の点を家族で確認しておくと、いざというときの選択がスムーズになります。

確認項目 具体的に確認すること
事業の形態 個人事業か法人(会社)か。株式の保有状況は?
後継者の意思 事業を継ぐ意思のある家族・親族はいるか
財産の評価額 事業用財産(土地・株式・設備)の現在の評価額の把握
納税資金の確保 相続税・贈与税を支払える現預金や保険の準備状況
遺言書の有無 誰にどの財産を渡すかを明確にしておく

セルフチェック:専門家への相談が特に必要なケース

  • 非上場株式(自社株)を保有している
  • 事業用不動産(工場・店舗・農地等)がある
  • 後継者が複数いて、誰に何を引き継がせるか未定
  • 相続人の間で意見がまとまっていない
  • 相続財産の合計が1億円を超える可能性がある

判断を誤った場合のリスク

事業承継の方法を誤って選択したり、対策が遅れたりすると、次のようなリスクが生じることがあります。

リスクの種類 具体的な影響
納税資金不足 相続税・贈与税の支払いのために事業用財産を急売せざるを得ない
事業の中断 後継者が決まっていないまま相続が発生し、事業継続が困難になる
評価額の見誤り 株式や不動産の評価を誤り、想定外の税額が生じる
特例の適用漏れ 小規模宅地等の特例や事業承継税制を使える場面で使えなかった

特に事業承継税制(贈与税・相続税の納税猶予)は、都道府県への「特例承継計画」の提出が必要であり、提出期限や要件が細かく定められています。制度を知らないまま相続を迎えてしまうと、適用の機会を逃すことになります。


自分で進めやすいケースと、専門家に相談すべきケース

自分で進めやすいケース

  • 事業規模が小さく、後継者もはっきり決まっている
  • 財産の大部分が現預金であり、評価の判断が比較的シンプル
  • 毎年少額の暦年贈与を始める段階

専門家に相談すべきケース

  • 自社株(非上場株式)の評価・移転を検討している
  • 事業承継税制(納税猶予)の活用を考えている
  • 相続人の間で意見が分かれている、または遺言書がない
  • 財産総額が基礎控除(3,000万円+600万円×相続人数)を超える見込み

事業承継は「税金をいかに減らすか」だけでなく、「誰がどのように事業を続けるか」という経営判断と密接に絡み合っています。税務と経営の両面から整理するためにも、早い段階での専門家への相談が実務上は有効です。


まとめ

事業承継の方法は「相続・贈与・売却」の3つに大別され、それぞれ税負担の仕組みと準備すべきことが異なります。生前準備期のうちに選択肢を比較し、後継者・財産の状況・タイミングを踏まえた判断軸を持つことが重要です。

相続税の計算の基本(基礎控除・税率の構造)については、国税庁タックスアンサー No.4152「相続税の計算」でも確認できます。また、小規模宅地等の特例(No.4124)や配偶者の税額軽減(No.4158)など、状況によって適用できる特例も複数あります。


本記事は情報提供を目的として作成しており、特定の税務判断を推奨するものではありません。実際の税務処理・申告については、税理士等の専門家にご相談ください。個別事情によって結論が異なる場合があります。


相続税は、財産の種類や相続人の状況によって計算方法や特例の適用が大きく変わります。「うちの場合はどうなるか」を知りたい方は、早めに税理士へご相談されることをおすすめします。

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免責事項 本記事は情報提供を目的として作成しており、個別の税務アドバイスではありません。実際の税務判断・手続きについては、税理士等の専門家にご相談ください。税制は改正される場合があり、記事の内容が最新状況と異なることがあります。個別事情によって結論が異なる場合がありますので、必ずご自身の状況に合わせてご確認ください。

参考:国税庁タックスアンサー No.4152 相続税の計算

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