車の費用、全額は経費にできない?
現場への移動や資材の運搬に車を使っている1人親方の方から、「ガソリン代は全部経費にしていいの?」という質問をよく受けます。結論からいうと、プライベートと兼用している車の場合は事業で使った割合だけを経費にする「家事按分」が必要です。
国税庁タックスアンサー No.2210「やさしい必要経費の知識」では、「業務の遂行上必要な部分に限り必要経費に算入できる」とされており、生活費との区別が求められています。
按分の基本:走行距離で計算するのが実務のスタンダード
家事按分の方法は法令で「走行距離に限る」とは定められていませんが、走行距離の記録が最も根拠を示しやすく、税務調査でも説明しやすい方法です。
按分割合の算出例
| 月の走行距離 | 事業用 | プライベート | 事業割合 |
|---|---|---|---|
| 合計 1,200km | 900km(現場・資材運搬) | 300km(買い物・旅行) | 75% |
この場合、月のガソリン代が20,000円なら、経費にできるのは15,000円(20,000円 × 75%)です。
経費にできる車両関連費の種類
兼用車で家事按分の対象になる主な費用は次のとおりです。
| 費用の種類 | 按分の要否 | 備考 |
|---|---|---|
| ガソリン代・軽油代 | 要按分 | 毎月発生する費用 |
| 車検・整備費用 | 要按分 | 1回あたりの金額が大きい |
| 自動車保険料 | 要按分 | 年払いの場合は月割りで按分 |
| 駐車場代(月極) | 要按分 | 現場近くの一時駐車場は全額経費の場合も |
| 高速道路代・ETC | 要按分 | 現場往復なら事業用として処理 |
| 減価償却費 | 要按分 | 車の取得価額を耐用年数で償却し按分 |
現場に直行直帰する際の高速代のように、明らかに事業目的だけの支出は全額経費にしても合理的です。一方で家族旅行の際に使ったガソリン代を事業費に含めると、按分の根拠が崩れます。
仕訳の具体例
走行距離記録から事業割合75%と決めた月のガソリン代20,000円を処理するケースです。
青色申告・白色申告ともに共通の考え方
ガソリンを給油したとき(現金払い):
車両費 20,000 / 現金 20,000
月末に家事按分を行うとき:
事業主貸 5,000 / 車両費 5,000
(プライベート分25%を事業主貸に振替)
結果として、車両費の残高は15,000円になります。
給油のたびに按分するより、月末にまとめて一括で振り替える方法が帳簿の手間を減らせます。
走行距離記録のつけ方
按分の根拠となる記録は、税務調査で提示を求められることがあります。専用アプリでなくても構いませんが、以下の情報を残しておくことが大切です。
- 日付
- 行き先(現場名・住所など)
- 走行距離(または始点・終点のオドメーター値)
- 目的(工事・見積もり・資材調達 など)
スマートフォンのマップアプリの履歴を補助的に使う方法も実務ではよく見られます。
よくある間違い
- 記録なしで「だいたい8割」と申告する:根拠がないと税務調査で否認されるリスクがあります
- 駐車違反の罰金を経費にする:罰金・科料は所得税法上、経費にできません
- 家族の送迎を事業走行に含める:明らかに私用なので事業走行距離から除外します
まとめ
1人親方が兼用車の費用を経費にするには、走行距離の記録をもとに事業割合を算出し、ガソリン代・車検・保険料などをまとめて按分するのが基本です。記録があれば根拠を示せるため、日々の走行メモをつける習慣が大切です。
本記事は情報提供を目的として作成しており、特定の税務判断を推奨するものではありません。実際の税務処理・申告については、税理士等の専門家にご相談ください。個別事情によって結論が異なる場合があります。
1人親方の税務は、外注か給与かの判定、工具や材料費、源泉徴収、帳簿管理など実務上の確認点が多くあります。現場ごとの契約形態に不安がある場合は、税理士に相談しておくと安心です。
毛利順活税理士事務所では、初回のご相談を無料で承っております。お気軽にお問い合わせください。