卸売業の売上計上はいつ?締日・入金日が違う場合の基本ルール

卸売業の売上は入金日ではなく「商品を引き渡した日(出荷日または検収日)」に計上します。締日・入金日とのズレが生じても、引渡し基準で記録することが所得税・法人税の原則です。

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月末締め・翌月末払いの取引が多い卸売業では、「請求書の締日」「実際の入金日」「商品を届けた日」がすべて異なることがよくあります。では、所得税(や法人税)の申告で売上を計上するのは、これらのうちどの時点なのでしょうか。

結論から言えば、売上は「入金日」でも「締日」でもなく、「商品を引き渡した日」に計上するのが原則です。以下で、その根拠と実務上の判断ポイントを整理します。


売上計上の原則は「実現主義」

所得税の計算では、収入金額は「その年において収入すべき金額」とされています(所得税法第36条、国税庁タックスアンサー No.2200)。この「収入すべき金額」とは、実際に入金があった金額ではなく、収入として確定した権利が生じた金額のことです。

この考え方を「実現主義」と呼びます。商品の売買であれば、買主に商品を引き渡した時点で収入を得る権利が確定するため、その時点が売上計上のタイミングになります。


引渡し基準の具体的な起算点

「引き渡した日」にも複数の考え方があります。実務ではいずれかを継続して使用することが求められます。

基準名 起算点の考え方 卸売業での利用場面
出荷基準 商品を倉庫から出荷した日 不特定多数の小売先に定期出荷するケース
引渡基準 買主が商品を受け取った日 配送完了を確認して請求するケース
検収基準 買主が検品・受入を完了した日 品質確認を条件に検収書が発行されるケース

卸売業では「検収書の発行をもって売上確定」としている取引先も多いため、取引の実態に合った基準を選び、毎期継続して適用することが重要です。途中で基準を変えると、期間損益が歪む原因になります。


締日・入金日との関係を整理する

よくある取引の流れを例に確認しましょう。

  • 商品出荷日:6月20日
  • 請求書の締日:6月30日
  • 入金日:7月31日

この場合、売上は6月に計上します。締日(6月30日)でも入金日(7月31日)でもなく、商品を引き渡した日(6月20日)が基準です。

個人事業主で年末(12月31日)が決算日の場合、12月中に出荷・引渡しが完了していれば、入金が翌年1月や2月であっても、その売上はその年の収入として申告する必要があります。ここを入金ベースで処理してしまうと、申告漏れになるリスクがあります。


よくある誤解と注意点

「入金されてから売上にすればいい」は誤り

現金主義(入金があったときに売上計上)は、税務上は原則として認められていません。小規模事業者に限り届出によって現金主義を選択できる特例がありますが、適用できる要件が限られます。通常の卸売業では発生主義・実現主義が前提です。

締日に合わせて一括計上するのも要注意

月末締めで請求書を発行しているからといって、月末時点で売上を一括計上している場合、出荷日が月中の取引は本来その月の売上です。この処理でも実態と大きくはずれないことが多いですが、期末(決算期)をまたぐ取引では期ずれが生じるため、出荷日ベースで確認する必要があります。

前受金は売上ではない

納品前に受け取った代金(前受金)は、商品を引き渡すまで売上ではありません。引渡し完了時点で初めて売上に振り替えます。


自分で確認できるチェックリスト

確認項目 OK の状態
売上計上の基準(出荷・引渡・検収)を決めている ✓ 基準を明文化している
期末をまたぐ取引を出荷日ベースで確認している ✓ 12月(または決算月)の出荷リストと照合している
締日や入金日ではなく引渡日を起点に記帳している ✓ 帳簿上の計上日が引渡日になっている
前受金を受け取ったときに「売上」と区別して処理している ✓ 引渡前は前受金で処理している
毎期、同じ基準を継続して使用している ✓ 基準を途中で変えていない

税理士に相談した方がいいケース

自分で判断しやすいのは、取引が単純で期末をまたぐ取引が少ない場合です。一方、次のようなケースでは専門家への確認をおすすめします。

  • 委託販売・預け在庫の取引があり、売上計上タイミングが不明確
  • 複数の取引先で検収条件がバラバラになっている
  • 過去に入金ベースで申告していた可能性があり、修正が必要かもしれない
  • 決算期をまたぐ大口取引が多く、期ずれの影響が大きい

まとめ

卸売業の売上計上は、締日でも入金日でもなく、商品を引き渡した日(出荷・引渡・検収のいずれかの基準)が起点です。特に決算期末をまたぐ取引では、この原則を意識しないと申告漏れや期間のズレが生じます。まず自社の取引フローを確認し、どの基準を使うか一度整理しておくと、記帳と申告の両方がスムーズになります。


本記事は情報提供を目的として作成しており、特定の税務判断を推奨するものではありません。実際の税務処理・申告については、税理士等の専門家にご相談ください。個別事情によって結論が異なる場合があります。


卸売業では、返品値引・廃棄ロス・委託販売・在庫管理など、取引条件によって処理が変わる論点があります。継続取引のルールを整えたい場合は、税理士への相談がおすすめです。

毛利順活税理士事務所では、初回のご相談を無料で承っております。お気軽にお問い合わせください。

免責事項 本記事は情報提供を目的として作成しており、個別の税務アドバイスではありません。実際の税務判断・手続きについては、税理士等の専門家にご相談ください。税制は改正される場合があり、記事の内容が最新状況と異なることがあります。個別事情によって結論が異なる場合がありますので、必ずご自身の状況に合わせてご確認ください。

参考:国税庁タックスアンサー No.2200 収入金額とその計算

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