親からの贈与と住宅ローン控除、控除対象の借入金はいくらになる?計算例で解説

親から贈与を受けた住宅取得資金に非課税・相続時精算課税特例を適用すると、住宅ローン控除の対象借入金は取得対価から贈与額を差し引いた残額が上限になる。事例では2,000万円の借入のうち1,400万円のみが対象となる。

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親から住宅取得資金の贈与を受けながら住宅ローンも組んだとき、「借入金の全額が住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)の対象になるのか」と疑問に思う方は少なくありません。

  • 非課税の贈与や相続時精算課税の特例を使うと、ローン控除に何か影響が出るのか?
  • 借入金2,000万円を組んでいれば、2,000万円全額が控除の計算ベースになるのか?
  • 控除できる金額はどうやって計算すればよいのか?

結論から言うと、贈与税の非課税や相続時精算課税の特例を受けた住宅取得資金を取得対価に充てた場合、住宅ローン控除の対象となる借入金は取得対価から贈与額を引いた残額が上限になります。国税庁の質疑応答事例をもとに、具体的な数字で確認していきます。

この記事でわかること

  • 贈与と住宅ローンを併用したときの控除対象借入金の計算ルール
  • 国税庁の質疑応答事例(取得対価4,000万円・借入2,000万円・贈与2,600万円)の計算過程
  • 控除額が想定より少なくなるケースと、そうならないケースの違い
  • 自分のケースを確認するためのチェックポイント

事例の設定

国税庁の質疑応答事例(出典:https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shotoku/06/21.htm)で示されている事実関係は次のとおりです。

項目 金額
家屋の取得対価の額 4,000万円
銀行からの住宅借入金(A単独名義) 2,000万円
住宅取得資金の贈与を受けた金額 2,600万円

Aは贈与を受けた2,600万円の全額を家屋の取得対価に充てており、この贈与について次の2つの特例を受けています。

  • 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税(租税特別措置法第70条の2)
  • 相続時精算課税の特例(同法第70条の3)

なぜ借入金の全額が控除対象にならないのか

住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)は、「住宅の取得等に要する資金に充てるための借入金」に対して適用されます。贈与税の非課税や相続時精算課税の特例を受けた住宅取得資金を取得対価に充てた場合、租税特別措置法施行令第26条第6項の規定により、住宅の取得対価の額はその特例の適用を受けた住宅取得等資金の額を控除した金額として計算されます。

つまり、贈与を受けて特例を使った金額は「取得対価の一部をすでに賄った資金」とみなされ、残りの取得対価の範囲でのみ借入金がローン控除の対象になる、という仕組みです。

取得対価のうち贈与資金で賄われた部分に対応する借入金は、「住宅の取得等に要する資金に充てられていない」と判断されるため、その相当部分はローン控除の計算から除かれます。

具体的な計算過程

事例に即して計算を追ってみます。

【ステップ1】特例適用後の取得対価を求める

取得対価(4,000万円)から特例の適用を受けた住宅取得資金(2,600万円)を差し引きます。

4,000万円 ー 2,600万円 = 1,400万円

これが、ローン控除の対象となる借入金の上限額です。

【ステップ2】借入金2,000万円との比較

実際の借入金は2,000万円ですが、上限は1,400万円です。借入金2,000万円のうち1,400万円を超える600万円の部分は、「住宅の取得等に要する資金に充てられていない」とされます。

【ステップ3】控除対象となる住宅借入金等の金額

2,000万円 ー 600万円 = 1,400万円

住宅ローン控除の計算に用いる借入金の金額は1,400万円となります。借入金の全額2,000万円を控除の計算ベースにすることはできません。

計算ステップ 金額
家屋の取得対価 4,000万円
差し引く贈与額(特例適用分) ▲2,600万円
控除対象借入金の上限 1,400万円
実際の借入金 2,000万円
控除対象外となる部分 600万円(超過分)
ローン控除の対象となる借入金 1,400万円

「自己資金で頭金を払い、その後まとめて借り入れた場合」は扱いが異なる

国税庁の質疑応答事例には重要な注記があります。自己資金で頭金等を支払い、その後、頭金等の金額を含めて借り入れを行っているような場合には、その借入金は実質的に「住宅の取得等に要する資金」に充てられているとみなされ、ローン控除の対象になります。

この注記のポイントは次のとおりです。

  • 自己資金で先に頭金を払い → その後まとめて借り入れ → その借入金を自己資金に充当したと考える
  • この場合は借入金全体がローン控除の対象になりうる

今回の事例とは逆に、贈与を受けた資金を直接取得対価に充てたケースだからこそ、上記の計算による制限が生じます。資金の流れによって結論が変わる点は、実務上の重要な判断ポイントです。

間違えやすいポイント

「借入金の全額がそのまま控除の計算ベースになる」という誤解

最もよくある誤解は、「ローンを2,000万円組んでいるから、2,000万円全額でローン控除を計算できる」と思い込むことです。

贈与税の特例を使わない純粋な自己資金と借入の組み合わせであれば、借入金全額が対象になります。しかし今回のように贈与税の非課税や相続時精算課税の特例を受けた資金を取得対価に充てた場合は、その贈与額を取得対価から差し引いた後の金額が借入金の上限になります。この点を見落とすと、ローン控除の金額を多く見積もってしまい、後から修正申告が必要になるリスクがあります。

「贈与の特例を使っても関係ない」という誤解

贈与税の非課税特例や相続時精算課税の特例を受けた事実が、所得税のローン控除にも影響する点を知らない方もいます。贈与税と所得税は別の税目ですが、贈与資金を住宅取得対価に充てると、その事実がローン控除の計算に直接連動します。

自分のケースを確認するチェックリスト

次の項目を確認することで、自分の状況に同様の制限が生じるか見当がつきます。

確認項目 該当する場合の影響
直系尊属から住宅取得資金の贈与を受けたか 特例の対象になりうる
贈与税の非課税(措法70条の2)を申告したか 控除対象借入金の上限計算が必要
相続時精算課税の特例(措法70条の3)を選択したか 同上
贈与を受けた資金を直接取得対価に充てたか 制限が生じる可能性あり
先に自己資金で頭金を払い、後からまとめて借り入れたか 制限が生じない可能性あり(注記参照)
取得対価から贈与額を引いた残額 < 実際の借入金か 借入金の一部が控除対象外になる

税理士に相談した方がいいケース

次のような状況では、自己判断せずに税理士への確認をおすすめします。

  • 贈与資金と自己資金・借入金の流れが複雑で、どの資金がどの支払いに充たったか整理できていない
  • 贈与税の申告(非課税や相続時精算課税の特例)と住宅ローン控除の申告を同じ年に行う
  • すでにローン控除の申告を行ったが、贈与との関係を考慮していなかった
  • 共有名義で取得しており、贈与の受け手と借入人の関係が複雑
  • 贈与額・借入金・取得対価の金額関係が事例と異なり、どう計算すべきか不明

よくある質問

贈与を受けた全額を取得対価に充てなかった場合はどうなりますか?

国税庁の事例では贈与2,600万円の全額を取得対価に充てています。充てた金額が贈与額より少ない場合は、実際に取得対価に充てた金額を基に計算します。ただし特例の申告内容とも関連するため、具体的な金額関係は税理士に確認することをおすすめします。

相続時精算課税の特例(措法70条の3)だけを使った場合も同じ計算になりますか?

国税庁の事例は非課税(措法70条の2)と相続時精算課税の特例(措法70条の3)の両方を受けるケースを前提にしています。いずれかの特例のみを使った場合でも、租税特別措置法施行令第26条第6項の規定に基づき、特例を受けた住宅取得資金の額を取得対価から控除する計算が適用されます。

翌年以降のローン控除の申告でも1,400万円を使い続ければよいですか?

控除の対象となる住宅借入金等の金額は、年末残高をもとに毎年計算しますが、その前提となる「控除対象となる借入金の上限」は取得時の判定で決まります。初年度に1,400万円を上限として確定させたのであれば、以降の年末残高との比較もその枠の中で行います。計算の仕方は確定申告の手引きまたは税理士にご確認ください。

確定申告の書類上、どこに影響が出ますか?

住宅借入金等特別控除の計算明細書(付表)で「住宅の取得等の対価の額」を記載する欄があり、ここで贈与額を控除した後の金額を使います。申告ソフトや手引きに従って入力する際、この点を意識して金額を入れることが必要です。

まとめ

直系尊属から住宅取得資金の贈与を受け、贈与税の非課税や相続時精算課税の特例を適用して住宅を取得した場合、住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)の計算には注意が必要です。

取得対価から特例を受けた贈与額を差し引いた残額が、控除対象となる借入金の上限になります。国税庁の事例(取得対価4,000万円・贈与2,600万円・借入2,000万円)では、借入金2,000万円全額ではなく1,400万円のみが控除対象です。

資金の流れや贈与の特例の使い方によって計算結果が変わるため、自分のケースに当てはめる際は各金額を整理したうえで確認することが大切です。


本記事は情報提供を目的として作成しており、特定の税務判断を推奨するものではありません。実際の税務処理・申告については、税理士等の専門家にご相談ください。個別事情によって結論が異なる場合があります。

相続税は、財産の種類や相続人の状況によって計算方法や特例の適用が大きく変わります。「うちの場合はどうなるか」を知りたい方は、早めに税理士へご相談されることをおすすめします。

毛利順活税理士事務所では、初回のご相談を無料で承っております。お気軽にお問い合わせください。

免責事項 本記事は情報提供を目的として作成しており、個別の税務アドバイスではありません。実際の税務判断・手続きについては、税理士等の専門家にご相談ください。税制は改正される場合があり、記事の内容が最新状況と異なることがあります。個別事情によって結論が異なる場合がありますので、必ずご自身の状況に合わせてご確認ください。

参考:住宅取得等資金の贈与に係る相続時精算課税の特例等を受けた場合の住宅借入金等特別控除の対象となる住宅借入金等の範囲

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