贈与税の基礎控除110万円、誰の枠かと申告義務の正しい知識

贈与税は年間110万円まで基礎控除があり非課税。受贈者ひとりあたりの枠で、複数人から受け取っても合算される。教育・住宅・結婚・子育て資金の非課税特例も別枠で使える。

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親から子へまとまったお金を渡したい、孫の教育費を援助したい——そう考えたとき、真っ先に頭をよぎるのが「贈与税はかかるの?」という疑問です。

  • 年間いくらまでなら贈与税がかからないの?
  • 110万円というのは贈る側の枠?もらう側の枠?
  • 特別な制度を使えばさらに非課税になると聞いたけど、条件は?
  • 申告しなくていいのはいくらまで?

これらの疑問に、国税庁タックスアンサー No.4408「贈与税の計算と税率(暦年課税)」をもとに答えていきます。基本の仕組みさえ押さえれば、自分のケースに当てはめて判断できるようになります。

この記事でわかること

  • 贈与税の基礎控除110万円の正しい理解(誰の枠か・どう計算するか)
  • 暦年課税の税率と計算方法(一般税率・特例税率の違い)
  • 基礎控除とは別に使える主な非課税特例の概要と適用条件
  • 申告が必要かどうかの判断基準
  • 税理士に相談した方がよいタイミング

まず結論:年間110万円までが非課税の基本ライン

贈与税には「基礎控除」として年間110万円が設けられています。1月1日から12月31日の1年間にもらった財産の合計額が110万円以下であれば、贈与税はかかりません。申告も不要です。

ただし、この110万円はもらった側(受贈者)ひとりあたりの枠です。父と母の両方から贈与を受けた場合、合計額で110万円かどうかを判断します。渡した側(贈与者)が何人に贈っても、受け取った側が複数人から受け取っても、計算はすべて「受贈者ごとの合計額」で行います。

この基礎控除とは別に、教育資金や住宅取得資金など特定の目的に限った非課税特例も存在します。それぞれ適用条件や限度額が異なるため、後のセクションで整理します。

贈与税の基本的な仕組み(暦年課税)

計算の流れ

国税庁タックスアンサー No.4408 によると、贈与税の計算は次の順序で行います。

  1. その年(1月1日〜12月31日)に贈与で取得した財産の価額をすべて合計する
  2. 合計額から基礎控除額110万円を差し引く
  3. 残った金額(課税価格)に税率を乗じ、控除額を差し引いて税額を算出する

110万円以下であれば②の段階でゼロになるため、税額は発生しません。

一般税率と特例税率の違い

贈与税の税率は、誰からもらったか・もらった人の年齢によって「一般税率」と「特例税率」の2種類に分かれます。

区分 適用される場合 特徴
特例税率 贈与を受けた年の1月1日時点で18歳以上の人が、直系尊属(父母・祖父母など)から受け取った場合 同じ課税価格でも税率が低い
一般税率 特例税率に当てはまらない場合(兄弟姉妹間、夫婦間、子が未成年の親子間など) 特例税率より税負担が重くなる場合がある

たとえば、父から18歳以上の子へ500万円を贈与した場合、課税価格は500万円-110万円=390万円。特例税率を使うと、390万円×15%-10万円=48.5万円の贈与税となります。同じ500万円でも一般税率では390万円×20%-25万円=53万円になります(いずれも国税庁タックスアンサー No.4408 の計算例に基づく)。

速算表の見方

課税価格(基礎控除後) 特例税率 控除額 一般税率 控除額
200万円以下 10% 10%
400万円以下 15% 10万円 20% 25万円
600万円以下 20% 30万円 30% 65万円
1,000万円以下 30% 90万円 40% 125万円
1,500万円以下 40% 190万円 45% 175万円
3,000万円以下 45% 265万円 50% 250万円
4,500万円以下 50% 415万円
4,500万円超 55% 640万円 55% 400万円

(出典:国税庁タックスアンサー No.4408

特例税率の方が全体的に税率が低く設定されており、特に課税価格が400万円超の帯で差が顕著になります。

基礎控除110万円にまつわるよくある誤解

誤解①「贈る側に110万円の枠がある」

実際には受け取る側(受贈者)ひとりあたりの枠です。たとえば親が3人の子それぞれに110万円ずつ贈っても、子ひとりあたりの受取額が110万円なので贈与税はかかりません。ただし、ひとりの子が親と祖父母の両方から合計130万円受け取れば、超過分の20万円が課税対象になります。

誤解②「110万円以下なら申告しなくていい」は常に正しいわけではない

基本的には申告不要ですが、後述する相続時精算課税を選択している場合は、110万円以下でも申告が必要なケースがあります(令和6年以降の改正で基礎控除が設けられたものの、制度の選択届出が絡む)。また、特例を使う場合は申告が要件になることも多いため、「110万円以下だから何もしなくていい」と早合点しないことが重要です。

誤解③「毎年110万円ずつ贈れば問題ない」

定期的に一定額を贈与し続ける場合、税務上「定期贈与」とみなされるリスクがあります。当初から「10年間で1,100万円を贈る」という合意があったと認定されると、その総額に対して贈与税が課される可能性があります。金額・時期・目的を毎年独立した贈与として管理することが大切です。

基礎控除とは別に使える主な非課税特例

暦年課税の110万円基礎控除とは別枠で、特定の目的に限って大きな金額を非課税にできる制度が複数あります。

特例の種類 非課税限度額(上限) 主な条件 申告
教育資金の一括贈与 1,500万円(学校等以外は500万円) 30歳未満の直系卑属・金融機関経由・令和8年3月31日で新規の適用は終了 必要
住宅取得等資金の贈与 省エネ等住宅か一般住宅かで異なる 直系尊属から・合計所得金額2,000万円以下等 必要
結婚・子育て資金の一括贈与 1,000万円(結婚費用は300万円) 18歳以上50歳未満の直系卑属・金融機関経由等 必要
夫婦間の居住用不動産贈与(配偶者控除) 最大2,000万円 婚姻期間20年以上・居住用不動産または取得資金 必要

教育資金の一括贈与は、祖父母などの直系尊属が30歳未満の孫や子に教育費として金融機関を通じて一括拠出する場合、1,500万円(学校等以外の塾・習い事等への支払いは500万円が上限)まで非課税になります。ただし、契約期間中に贈与者が死亡した場合、原則として残額が相続財産に加算されるルールがあるため、活用する際は相続対策全体と合わせて検討する必要があります。この制度は令和8年度税制改正で延長されず、令和8年3月31日をもって新規の適用は終了しました。なお、同日までに拠出済みの金銭等については、引き続き本制度が適用されます。

なお、各特例の具体的な限度額は年度や住宅の種類・所得要件によって変わることがあります。最新の要件は国税庁のウェブサイトや税理士にご確認ください。

相続時精算課税との違いと令和6年以降の変化

相続時精算課税とは

60歳以上の親・祖父母から18歳以上の子・孫への贈与に限り、累計2,500万円まで贈与税を非課税(猶予)にできる制度です。ただし、贈与者が亡くなったとき、贈与した財産を相続財産に加算して相続税を精算します。

令和6年からの大きな変化

令和6年(2024年)から、相続時精算課税にも年間110万円の基礎控除が新設されました。この110万円の範囲内の贈与は申告不要で、相続時にも財産として加算されません。

また、暦年課税で生前贈与した財産を相続財産に加算する期間が、相続開始前3年から7年へ拡大されました(令和6年1月1日以降の贈与から段階的に適用)。ただし、延長された4年分(相続開始前4〜7年以内)については総額100万円が非課税となる控除が設けられています。

この改正により、「毎年110万円の暦年贈与を続ければ相続税対策になる」という従来の考え方は見直しが必要になっています。相続開始が近い時期の贈与ほど効果が薄れるため、早期からの計画が重要です。

申告が必要かどうかの判断チェックリスト

以下を確認することで、申告の要否をおおまかに判断できます。

  • その年に受け取った贈与の合計額が110万円以下である(暦年課税を選択している場合)
  • 相続時精算課税を選択していない
  • 住宅取得資金・教育資金・結婚子育て資金などの特例を使っていない
  • 配偶者への居住用不動産の特例(2,000万円控除)を使っていない

上記すべてに該当する場合、申告は原則不要です。1つでも当てはまらない場合は、翌年2月1日から3月15日の申告期限を確認した上で、贈与税の申告書を提出する必要があります。

税理士に相談した方がよいケース

次のような状況では、自己判断より専門家への相談をおすすめします。

  • 贈与額が110万円を超えており、一般税率と特例税率のどちらが適用されるか判断に迷う
  • 相続時精算課税への切り替えを検討している(一度選択すると取り消せない)
  • 複数の非課税特例を組み合わせて使いたい
  • 相続対策として継続的な贈与を計画しており、加算期間の拡大(3年→7年)の影響を確認したい
  • 名義預金や生命保険など、贈与と認定されるかどうかグレーゾーンの財産がある
  • 贈与税の申告期限(3月15日)まで時間的余裕がない

特に相続時精算課税は、一度選択すると暦年課税に戻れません。メリットとデメリットを状況ごとに比較することが、長期的な節税につながります。

よくある質問

同じ人から年をまたいで複数回贈与を受けた場合、合計額で考えるの?

同一年(1月1日〜12月31日)内に受け取った贈与はすべて合算します。ただし、年をまたいだ贈与は別々の年に行われたものとして、それぞれの年に基礎控除110万円が適用されます。同じ親から毎年100万円ずつ受け取るのであれば、各年の受取額が110万円以下なので贈与税はかかりません。

現金ではなく不動産や株式を贈与された場合も110万円の基礎控除は使えますか?

使えます。贈与の対象は現金に限らず、不動産・株式・貴金属など財産全般が対象です。価額の評価方法が現金と異なる(不動産は路線価や固定資産税評価額、非上場株式は相続税評価額など)ため、実際の受け取り額より評価額が低くなることもあります。評価方法の判断が難しい財産は、専門家への確認をおすすめします。

110万円以下の贈与でも贈与契約書を作った方がいいですか?

必須ではありませんが、作成しておくことをおすすめします。後日、税務調査で「本当に贈与があったのか」「名義預金ではないか」と疑われるリスクを減らせます。贈与の日付・金額・当事者の氏名・署名捺印を記録した書面を残し、振込みで記録に残る形で資金を移動しておくと、客観的な証拠になります。

教育資金の一括贈与は、塾や習い事にも使えますか?

学校等に直接支払う入学金・授業料などは1,500万円が上限ですが、塾・習い事・家庭教師費用など学校等以外の者に支払う費用は500万円が限度となります。領収書を金融機関に提出して払い出しを受ける手続きが必要です。何が対象になるかの詳細は国税庁のパンフレットで確認してください。

まとめ

贈与税の基本を整理すると次のようになります。

  • 年間110万円までは基礎控除があり、非課税・申告不要(暦年課税の場合)
  • 110万円の枠は受け取る側(受贈者)ひとりあたりの枠
  • 110万円を超えた分は、誰から受け取ったか・受贈者の年齢によって一般税率か特例税率で計算する
  • 教育資金・住宅取得資金・結婚子育て資金など、特定目的の非課税特例は110万円とは別枠
  • 令和6年以降、暦年贈与の相続財産加算期間が7年に拡大されており、生前贈与計画の見直しが必要
  • 相続時精算課税は年間110万円の基礎控除が新設されたが、一度選択すると取り消せないため慎重に

家族への財産移転は、贈与税だけでなく相続税全体との兼ね合いで考えることが大切です。金額が大きくなるほど、どの制度をどの順序で使うかで将来の税負担が変わってきます。


本記事は情報提供を目的として作成しており、特定の税務判断を推奨するものではありません。実際の税務処理・申告については、税理士等の専門家にご相談ください。個別事情によって結論が異なる場合があります。


相続税は、財産の種類や相続人の状況によって計算方法や特例の適用が大きく変わります。「うちの場合はどうなるか」を知りたい方は、早めに税理士へご相談されることをおすすめします。

毛利順活税理士事務所では、初回のご相談を無料で承っております。お気軽にお問い合わせください。

免責事項 本記事は情報提供を目的として作成しており、個別の税務アドバイスではありません。実際の税務判断・手続きについては、税理士等の専門家にご相談ください。税制は改正される場合があり、記事の内容が最新状況と異なることがあります。個別事情によって結論が異なる場合がありますので、必ずご自身の状況に合わせてご確認ください。

参考:贈与税の計算と税率(暦年課税)

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