コピー機や車、パソコンをリースで調達したとき、毎月のリース料を「そのまま経費にしていい」と思っていた方は少なくありません。しかし契約の内容によっては、リース料をそのまま費用にするのではなく、資産を購入したときと同じ処理が必要になります。
- リース料は全額その年の経費になるの?
- 「売買処理」と「賃貸借処理」、どちらが自分の契約に当たる?
- 資産計上が必要な場合、帳簿にはどう書けばいいの?
この記事では、こうした疑問に対して、判断の根拠となる2つの要件と、経理処理の具体的な考え方を順番に整理します。
この記事でわかること
- リース取引を「売買処理」「賃貸借処理」のどちらで扱うかの判断基準
- 判断に使う2つの要件(中途解約禁止・フルペイアウト)の意味
- それぞれの処理方法と帳簿への記録の考え方
- 自分で判断できる境目と、専門家に相談すべきタイミング
まず結論:リース料が「経費」になるかどうかは契約内容次第
毎月払うリース料をそのまま費用(経費)として計上できるのは、賃貸借取引(オペレーティング・リース)に該当するケースです。一方、中途解約が禁止されており、かつリース資産から生じる費用を賃借人が実質的に負担する構造になっている契約は、法人税法上のリース取引(ファイナンス・リース取引)とみなされ、資産の購入と同じ「売買処理」が必要になります。
つまり、リース料を毎月経費にできるかどうかは、「どんな名目の契約か」ではなく「契約の実態がどちらに当たるか」で決まります。
この記事の対象になる方
- 個人事業主として事業用の機器・車両・設備をリース契約で使っている方
- 新たにリース契約を結ぶ前に経理処理の見通しを立てたい方
- これまで処理方法を確認せずリース料を全額経費にしてきた方
なお、本記事は平成20年4月1日以後に締結されたリース契約を対象としています(旧契約については別の取扱いがあります)。
リース取引の3区分を整理する
リース取引は、経理処理の観点から大きく3つに分かれます。
| 区分 | 内容 | 経理処理 |
|---|---|---|
| 所有権移転リース取引 | リース期間終了後に資産の所有権が賃借人に移転するもの | 売買処理(資産計上+減価償却) |
| 所有権移転外リース取引 | 所有権は移転しないが、法人税法上のリース取引に該当するもの | 売買処理(リース期間定額法で償却) |
| 賃貸借取引(オペレーティング・リース) | 上記いずれにも該当しないもの | 賃貸借処理(リース料を費用計上) |
上の2つをまとめて「ファイナンス・リース取引」と呼ぶことが多く、これらは売買があったものとして処理します。3つ目の賃貸借取引だけが、リース料をそのまま費用にできる処理です。
「法人税法上のリース取引」に該当するかの判断基準
法人税法上のリース取引に当たるかどうかは、次の2つの要件をどちらも満たすかどうかで判断します(国税庁タックスアンサー No.5702)。
要件①:中途解約が禁止されていること
リース期間中に契約を解除できないこと、または中途解約する場合には未経過期間のリース料の合計額のおおむね全部(原則として90%以上)を支払う条件になっていることが必要です。
一般的なファイナンス・リース契約は「解約不可(ノンキャンセラブル)」の条件になっており、この要件を満たすケースがほとんどです。
要件②:フルペイアウトであること
賃借人がリース資産から得られる経済的な利益を実質的に享受でき、かつリース資産の使用に伴う費用を実質的に負担する構造になっていること(フルペイアウト)が必要です。
具体的には、リース期間中に賃借人が支払うリース料の合計額が、その資産の取得に通常要する価額の90%相当額を超える場合に、この要件を満たすと判断されます。
2要件のまとめ
| 要件 | 内容 | 判断の目安 |
|---|---|---|
| 中途解約禁止(ノンキャンセラブル) | 期間中の解約が不可、または解約時に残リース料の90%以上を支払う | 契約書の解約条項を確認 |
| フルペイアウト | 支払リース料の合計が取得価額の90%超 | リース料総額÷見積取得価額で計算 |
この2要件をどちらも満たすと法人税法上のリース取引(ファイナンス・リース)になり、売買処理が必要です。いずれか一方でも満たさない場合は賃貸借取引として、リース料をそのまま費用にできます。
「売買処理」と「賃貸借処理」の経理の違い
売買処理の考え方
売買処理では、リース開始時点でリース資産を自己の資産として帳簿に計上し、その後は減価償却を通じて費用を計上します。
- 所有権移転リース取引:資産の種類に応じてその法人が選定している償却方法を適用します。
- 所有権移転外リース取引:リース期間定額法を適用します。リース期間にわたって均等に償却する方法です。
実務上、売買処理では毎月のリース料の支払いは「資産の取得代金の支払い」として処理するイメージになります。リース料そのものを費用として落とすのではなく、減価償却費が費用になります。
なお、出典(No.5702)には「賃借人である法人が賃借料その他そのリース資産を賃借するために支出した費用として損金経理をした金額は、償却費として損金経理をした金額に含まれる」と記載されており、リース料を費用として経理した場合でも、一定の範囲で減価償却費として認められる取扱いがあります。
賃貸借処理の考え方
賃貸借取引(オペレーティング・リース)に該当する場合は、毎月のリース料をそのまま費用として計上します。資産計上も減価償却も必要ありません。帳簿の処理としては、支払ったリース料を「賃借料」や「リース料」として費用に計上するだけです。
よくある間違いとその原因
「ファイナンス・リースでも毎月のリース料を経費にしてよい」
最も多い誤りです。ファイナンス・リース(法人税法上のリース取引)であれば売買処理が必要で、リース料をそのまま費用にすることは本来できません。
なぜこの誤りが起きるかというと、「リースはレンタルと同じ」という感覚で処理してしまうためです。しかし、実態として資産を割賦で購入しているに近い取引では、税務上も購入と同様の処理が求められます。
「契約書に『リース』と書いてあれば賃貸借処理でよい」
契約の名称ではなく実態で判断します。「リース契約」という名目であっても、2要件を満たせばファイナンス・リースとして売買処理が必要です。逆に言えば、名前が「レンタル」であっても実態がファイナンス・リースに当たる場合は売買処理になります。
「個人事業主だからリース税制は関係ない」
法人税法上のリース取引の規定は法人を念頭に置いた条文ですが、所得税においても同様の考え方で取り扱われます。個人事業主も事業用のリース資産については同じ判断基準で処理を行う必要があります。
自分で確認できるチェックリスト
契約書を手元に置いて、以下を確認してみてください。
- 契約書に「解約不可」「中途解約禁止」の条項があるか
- 解約時の条件(残リース料の何%を支払うか)が明記されているか
- リース期間中のリース料の合計額を計算できるか
- 対象資産の一般的な取得価額を把握しているか
- リース料合計÷取得価額が90%を超えているか
- リース期間終了後に所有権が移転する条項があるか
上記の確認で「中途解約禁止かつリース料合計が取得価額の90%超」であれば、ファイナンス・リースとして売買処理が必要です。いずれかが該当しなければ、賃貸借処理でリース料をそのまま費用にできます。
税理士に相談した方がよいケース
次のような状況では、自己判断で処理を進める前に専門家への確認をお勧めします。
- リース料の総額が高額で、売買処理か賃貸借処理かで税負担が大きく変わる
- 契約書の内容が複雑で、2要件の充足・非充足が判断しにくい
- セール・アンド・リースバック(自社資産を売却してリースバックする取引)を行っている
- 複数のリース契約があり、それぞれの処理を整理できていない
- これまでの処理方法が間違っていた可能性があり、過去の申告を修正すべきか迷っている
特にセール・アンド・リースバック取引については、出典(No.5702)に「一連の取引が実質的に金銭の貸借であると認められるときは、その売買はなかったものとされ、金銭の貸付けがあったものとされる」という特別な取扱いが定められており、通常のリース取引とは異なる処理になります。
よくある質問
リース期間が短い場合(1〜2年)でも売買処理になりますか?
期間の長短だけでは判断しません。中途解約禁止かつフルペイアウトの2要件を満たすかどうかが基準です。期間が短くても2要件を満たせば売買処理になりますし、長期の契約でも要件を満たさなければ賃貸借処理になります。
所有権移転外リースのリース期間定額法とは何ですか?
リース期間にわたって、リース資産の取得価額(リース料総額などを基に計算)を均等に費用化していく償却方法です。毎年の減価償却費が一定額になるため、計算は比較的シンプルです。
車両をカーリースで使っています。売買処理になりますか?
カーリースも、中途解約禁止かつリース料合計が取得価額の90%超であれば売買処理の対象になります。カーリースは一般的にノンキャンセラブルで設計されていることが多いため、フルペイアウトの要件も確認した上で判断してください。
個人事業の白色申告者もリースの処理を帳簿に記録する必要がありますか?
白色申告者も、不動産所得・事業所得・山林所得がある場合は、収入金額や必要経費を帳簿に記録し、書類を保存する義務があります(国税庁タックスアンサー No.2080)。リース資産に関しても取引の内容・金額を適切に記帳してください。
まとめ
リース契約の経理処理は、「中途解約禁止」と「フルペイアウト(リース料総額が取得価額の90%超)」という2つの要件で判断します。どちらも満たすファイナンス・リースは売買処理が必要で、リース料をそのまま費用にすることはできません。2要件のどちらかでも満たさない場合は賃貸借処理となり、毎月のリース料を費用として計上できます。
まず手元の契約書を確認し、上記チェックリストで自分のケースがどちらに当たるかを確認することが出発点です。判断に迷う場合や、過去の処理に不安がある場合は、税理士への相談で論点を整理することをお勧めします。
本記事は情報提供を目的として作成しており、特定の税務判断を推奨するものではありません。実際の税務処理・申告については、税理士等の専門家にご相談ください。個別事情によって結論が異なる場合があります。
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