社会保険の扶養と税の扶養はどう違う?フリマ・転売セラーの実務処理を解説

フリマ・転売の売上が増えると、配偶者の扶養から外れるかどうかが問題になります。税の扶養(配偶者控除)と社会保険の被扶養者は判定基準・所管・手続き先がそれぞれ異なります。それぞれの判定ラインと実務上の確認手順を解説します。

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メルカリやヤフオクの副業が軌道に乗ってきた、あるいはせどりを本業に近い規模で続けている——そういったタイミングで「そろそろ配偶者の扶養から外れてしまうかも」と不安になる方は少なくありません。

ところが、いざ確認しようとすると次のような疑問が出てきます。

  • 税の扶養(配偶者控除)と社会保険の扶養は、判定ラインが同じなの?
  • 「130万円の壁」と「103万円の壁」、どちらを気にすればいい?
  • 自分の経費を差し引いた金額で判定されるの?

結論からお伝えすると、税の扶養と社会保険の扶養は制度が別物で、判定基準も手続き先も異なります。売上が伸びた年は両方を別々に確認しないと、思わぬタイミングで扶養を外れてしまう可能性があります。以下で実務上の処理を整理します。

この記事でわかること

  • 税の扶養(配偶者控除)と社会保険の被扶養者の違い
  • それぞれの判定ラインと「何の金額で判定するか」
  • フリマ・転売セラーが実務でやるべき確認手順
  • よくある誤解と、専門家に相談すべきタイミング

まず結論:2つの扶養は制度が完全に別物

項目 税の扶養(配偶者控除) 社会保険の被扶養者
所管 国税庁(税法) 日本年金機構・健康保険組合等
判定の基礎 合計所得金額(所得=収入−経費) 年間収入(経費控除後の額・保険者判断)
上限(令和8年分) 合計所得金額 62万円以下 年間収入 130万円未満
参考:令和7年分 合計所得金額 58万円以下 同じ(130万円未満)
手続き先 確定申告(年末調整) 被保険者(配偶者)の勤務先経由
外れたときの影響 配偶者控除が使えず納税額が増える 自分で国民健康保険・国民年金に加入が必要

この2つは連動していません。税の扶養から外れても社会保険の扶養に入れているケースもあれば、その逆もあります。それぞれ独立して判定してください。

【税の扶養】配偶者控除の判定ライン

何の金額で判定するか

税の扶養(配偶者控除)は、合計所得金額で判定します。フリマ・転売の場合、合計所得金額は「売上 − 仕入・経費」で計算した事業所得(または雑所得)の金額です。

国税庁タックスアンサー No.1190「配偶者の所得がいくらまでなら配偶者控除が受けられるか」によれば、配偶者の年間の合計所得金額が一定額以下であれば配偶者控除が受けられます。

年分ごとの所得上限

年分 合計所得金額の上限
令和8年分以後 62万円以下
令和7年分 58万円以下
令和6年分以前 48万円以下

令和7年度・令和8年度の税制改正で基礎控除の引上げに連動して所得要件も変わっています。「48万円以下」という旧来の数字で判断していると、本来は受けられる配偶者控除を申告し忘れるケースがあります。何年分の話かを確認してから判定してください。

なお、配偶者控除を受ける納税者本人(配偶者の配偶者)の合計所得金額が1,000万円を超える年は、配偶者控除は受けられませんタックスアンサー No.1191)。

配偶者特別控除との関係

合計所得金額が上記の上限を超えても、すぐに控除がゼロになるわけではありません。配偶者特別控除の仕組みがあり、納税者本人の合計所得金額が1,000万円以下で、配偶者の合計所得金額が一定の範囲であれば、段階的に控除が受けられます(令和7年分は58万円超133万円以下)。

令和8年分の範囲については、令和8年度税制改正の大綱に記載がありません。申告前に国税庁のタックスアンサー No.1191 で最新の金額を確認してください。合計所得金額が上限を少し超えたからといって必ずしも控除がゼロになるわけではないため、まずは対象になるかを確かめることをおすすめします。

フリマ・転売セラーの計算例

せどり(転売)を個人事業として行っている場合の計算イメージを示します。

年間売上 300万円、仕入原価 180万円、その他経費(送料・梱包材・通信費等)50万円の場合 事業所得 = 300万円 − 180万円 − 50万円 = 70万円 → 令和8年分:62万円を超えるため配偶者控除は不可。配偶者特別控除の対象かを確認。 → 令和7年分:58万円を超えるため同様に不可。

年間売上 250万円、仕入原価 160万円、その他経費 45万円の場合 事業所得 = 250万円 − 160万円 − 45万円 = 45万円 → 令和8年分:62万円以下のため配偶者控除が受けられる。 → 令和7年分:58万円以下のため同様に受けられる。

経費をどこまで計上できるかが判定を左右します。レシートや領収書の保管が重要です。

【社会保険の扶養】被扶養者の判定ライン

何の金額で判定するか

社会保険の被扶養者(健康保険・厚生年金の扶養)は、税の扶養と判定基準が異なります。

日本年金機構のページには「自営業者についての収入額は、当該事業遂行のための必要経費を控除した額となります」と明記されています。フリマ・転売セラーも自営業者として経費を控除した金額で判定されることになります。

ただし、控除できる経費の範囲は税法上の必要経費と同じとは限りません。最終的な認定は加入している健康保険の保険者(協会けんぽ・健康保険組合等)が「生活の実態を勘案して」行うとされており(厚生労働省 昭和52年4月6日 庁保発第9号)、保険者ごとに判断が異なる場合があります。

収入要件

日本年金機構の記載によれば、被扶養者の収入要件は次のとおりです。

  • 年間収入 130万円未満(60歳以上または障害者の場合は180万円未満)
  • かつ、同居の場合は被保険者(配偶者)の収入の半分未満

「130万円未満」という数字だけが独り歩きしがちですが、「かつ」以降の条件も満たす必要があります。片方だけクリアしていても認定されない場合があります。

税の扶養との判定の違いを整理すると

比較項目 税の扶養(配偶者控除) 社会保険の被扶養者
判定に使う数字 合計所得金額(売上−経費) 経費控除後の年間収入(保険者が判断)
経費の取り扱い 税法上の必要経費をすべて控除可 「事業遂行のための必要経費」に限定・保険者判断
上限ライン 令和8年分:62万円(令和7年分は58万円) 130万円未満(年齢・同居条件あり)
改正の影響 令和7年分・令和8年分と続けて変更あり 現時点で変更なし
判定・手続き 確定申告または年末調整 配偶者の勤務先経由・保険者が認定

よくある誤解とその原因

誤解①「130万円未満なら税も社会保険も扶養に入れる」

税の扶養(配偶者控除)の判定ラインは、令和8年分で合計所得金額62万円以下です。給与所得者であれば給与収入136万円(給与所得控除の最低保障74万円+所得62万円)が目安になりますが、フリマ・転売セラーは給与所得控除が使えません。事業所得が62万円を超えた時点で配偶者控除は使えなくなります。「130万円未満なら大丈夫」という感覚を持っていると、税の申告で控除を受けられない状態に気づかないまま過ごすことになります。

なお「103万円の壁」という言い方をよく見かけますが、これは令和6年分以前の数字(給与所得控除55万円+所得48万円)です。給与所得控除の最低保障額も基礎控除も引き上げられているため、いまの判断には使えません。

誤解②「社会保険の扶養は経費を差し引けない」

「売上がそのままカウントされる」と誤解されることがありますが、日本年金機構は自営業者の収入について「必要経費を控除した額」と明記しています。ただし控除できる経費の範囲は保険者の判断によるため、税法と完全に同じではない点に注意が必要です。判定に迷う場合は、配偶者が加入している健康保険の保険者に直接確認するのが確実です。

誤解③「2つの扶養は同時に外れる(または同時に維持できる)」

税の扶養と社会保険の扶養は独立した制度です。たとえば所得が62万円(令和8年分)を少し超えて税の配偶者控除が使えなくなっても、社会保険の被扶養者(年間収入130万円未満)は継続できるケースがあります。逆に、売上が急増して社会保険の扶養を外れるケースでも、経費が多ければ税の配偶者控除は受けられることがあります。

実務上の確認チェックリスト

年度末・確定申告前に、次の項目を順番に確認してください。

  • 年間の売上・仕入・経費を集計し、事業所得(合計所得金額)を計算した
  • 合計所得金額が62万円以下かどうかを確認した(令和8年分。令和7年分は58万円以下)
  • 納税者本人(配偶者の配偶者)の合計所得金額が1,000万円以下かどうかを確認した
  • 上限を超えた場合、配偶者特別控除の対象になるか金額を確認した
  • 社会保険の被扶養者の判定(年間収入130万円未満)を別途確認した
  • 社会保険の判定については配偶者の勤務先・保険者に確認した
  • 扶養から外れる場合、国民健康保険・国民年金の加入手続きのタイミングを確認した
  • 経費の領収書・仕入記録を保管し、所得の根拠を説明できる状態にしてある

税理士に相談した方がいいケース

次のような状況に当てはまる場合は、自己判断よりも専門家への相談を優先してください。

  • 売上が年々増加していて、今後の扶養判定がどうなるか見通しが立たない
  • フリマ・転売の所得区分(事業所得か雑所得か)について迷いがある
  • 配偶者特別控除の適用金額を正確に計算したい
  • 社会保険の扶養を外れた年の遡及請求(保険料の追納)を求められた
  • 帳簿や経費の証憑が整理できておらず、申告に不安がある

特に所得区分の判断(事業所得・雑所得)は、帳簿の有無や取引の反復継続性によって結論が変わることがあります(タックスアンサー No.1350参照)。判断が分かれる境目では税理士への確認が安全です。

よくある質問

夫の扶養に入っている妻がメルカリで売上を得た場合、どちらの扶養を確認すればいい?

両方を別々に確認する必要があります。税の扶養(配偶者控除)は合計所得金額62万円以下(令和8年分)かどうかを確定申告で判定します。社会保険の扶養は夫が加入している健康保険の保険者に年間収入(経費控除後)が130万円未満かどうかを確認します。どちらか一方だけを確認して「大丈夫」と結論付けないようにしてください。

仕入れや送料は経費として差し引けますか?

税の確定申告では、事業遂行に必要な費用(仕入原価・送料・梱包材・プラットフォーム手数料・通信費等)は原則として必要経費として計上できます。領収書や明細の保管が前提になります。社会保険の被扶養者の判定でも、日本年金機構は「事業遂行のための必要経費を控除した額」で判定するとしていますが、控除できる範囲は保険者の判断によるため、詳細は加入している健康保険の保険者に確認してください。

扶養から外れるタイミングはいつ?

税の配偶者控除は、その年の合計所得金額が上限を超えた年の確定申告で控除を使えなくなります。社会保険の被扶養者は、収入が継続的に130万円以上になると見込まれた時点で届出が必要になります。年の途中で大幅に売上が伸びた場合は、早めに配偶者の勤務先・保険者に相談することをおすすめします。

令和7年分と令和8年分で何が変わった?

税の扶養は、合計所得金額の上限が令和7年分の58万円から令和8年分以後は62万円に引き上げられました(令和8年度税制改正)。基礎控除も引き上げられ、令和8年分は104万円です。

社会保険の被扶養者の収入要件(130万円未満)については、同様の変更は確認できません。税だけが変わっている点に注意してください。

まとめ

社会保険の扶養と税の扶養は、制度の所管・判定基準・手続き先がそれぞれ異なります。フリマ・転売セラーとして売上が増えてきたタイミングで特に押さえておきたい点を整理します。

  • 税の配偶者控除は合計所得金額(売上−経費)で判定。令和8年分は62万円以下(令和7年分は58万円以下)
  • 社会保険の被扶養者は年間収入130万円未満かつ同居なら被保険者の半分未満。自営業者は経費を控除した額で判定されるが、控除範囲は保険者判断
  • 2つの扶養は連動しておらず、それぞれ独立して確認する必要がある
  • 社会保険の詳細は加入している健康保険の保険者(協会けんぽ・健康保険組合等)に直接確認するのが確実

年ごとに所得のラインが変わっているため、「以前確認したから大丈夫」ではなく、申告年分ごとに数字を確認する習慣をつけておくことが大切です。


本記事は情報提供を目的として作成しており、特定の税務判断を推奨するものではありません。実際の税務処理・申告については、税理士等の専門家にご相談ください。個別事情によって結論が異なる場合があります。

せどり・転売の税務は、取引量が増えるほど判断が複雑になります。確定申告の時期に慌てないためにも、早めに税理士に相談しておくと安心です。

毛利順活税理士事務所では、初回のご相談を無料で承っております。お気軽にお問い合わせください。

免責事項 本記事は情報提供を目的として作成しており、個別の税務アドバイスではありません。実際の税務判断・手続きについては、税理士等の専門家にご相談ください。税制は改正される場合があり、記事の内容が最新状況と異なることがあります。個別事情によって結論が異なる場合がありますので、必ずご自身の状況に合わせてご確認ください。

参考:配偶者の所得がいくらまでなら配偶者控除が受けられるか

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