企業から「レビュー用にどうぞ」と商品を送ってもらったとき、現金のやり取りがないから税金は関係ないと思っていませんか。ところが、こういった現物提供は税務上「収入」として扱われます。
- 商品をもらったら必ず申告が必要なの?
- 収入の金額はいくらで計算する?
- 帳簿にはどう書けばいい?
PR案件が増えてきたタイミングで、こうした疑問が出てくるのは自然なことです。現物提供の収入計上のルールと、実際の仕訳の書き方を具体的に解説します。
この記事でわかること
- 現物提供(商品・サービス)がなぜ収入になるのか
- 収入として計上する金額の計算のしかた
- 受け取り時と動画公開後の仕訳例
- 商品を手元に残した場合・返却した場合の違い
- よくある処理ミスとその原因
現物提供が「収入」になる理由
国税庁タックスアンサー No.2200「収入金額とその計算」には、次のように書かれています。
各種所得の収入金額には、金銭による収入だけでなく物または権利等を取得する時における価額や経済的利益を享受する時における価額も含まれます。
つまり、現金を受け取っていなくても、経済的な利益を得た時点でその価額を収入として計上する義務があるということです。
企業から商品を無償で受け取ってレビュー動画を制作する行為は、「動画制作・PR活動という役務の提供」に対して「商品」という形で報酬を受け取っている取引です。商品の時価相当額が、あなたが得た経済的利益になります。
収入として計上する金額の決め方
現物提供の場合、収入として計上する金額は受け取った商品の時価(通常の販売価額)が原則です。
| 状況 | 計上する金額の目安 |
|---|---|
| 市販されている商品 | メーカー希望小売価格または実勢販売価格 |
| 非売品・サンプル品 | 同等品の市場価格、または企業が示した評価額 |
| サービス・体験(宿泊・食事等) | 通常の販売価格 |
実勢価格がはっきりしている商品(Amazonや楽天で購入できるもの)は、レビュー公開時点での販売価格を収入金額とするのが実務上わかりやすい方法です。金額の根拠として、受け取った時点のECサイトのページをスクリーンショットで保存しておくと、後の帳簿確認がスムーズです。
収入を計上するタイミング
No.2200 には「収入すべき権利の確定した金額」が収入になると書かれています。現物提供の場合、一般的には商品を受け取った時点(または役務提供が完了した時点)が収入の確定時期になります。
実務上は「動画公開でPR義務が完了した時点」と「商品到着時点」のどちらを採るか迷うケースがあります。企業との契約書に「動画公開をもって報酬確定」と書かれていれば動画公開時、単に「商品を提供する」とだけ書かれていれば商品到着時が収入計上のタイミングの目安になります。
仕訳の具体例
ケース①:市販品(時価3万円)を受け取り、そのままレビュー動画で使用・手元に残す
商品を受け取った時点で、経済的利益が確定しています。
受け取り時の仕訳
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 消耗品費(または備品) | 30,000円 | 事業収入(または雑収入) | 30,000円 |
受け取った商品を「動画撮影に使う業務用の消耗品」として費用処理しつつ、受け取ったこと自体を収入として計上します。収入と費用が同額なので、この取引だけで見れば課税所得は生じませんが、収入としての計上を省略してよいわけではありません。確定申告書には収入として記録する必要があります。
ケース②:時価5万円の商品を受け取り、レビュー後に企業へ返却する
返却が前提の場合、商品は「一時的に預かったもの」です。
受け取り時の仕訳
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 預り品(仮勘定) | 50,000円 | 預り品(仮勘定)貸方 | 50,000円 |
返却が確実で手元に残らないのであれば、収入として計上しないことも実務上は認められる場合があります。ただし、「返却する前提だった商品を結局手元に置いた」となると、その時点で収入が発生したと見られるリスクがあります。契約書・メールなどで返却の取り決めを明確にしておくことが重要です。
ケース③:現金5万円+商品(時価2万円)の混合案件
現金部分と現物部分を分けて計上します。
入金・受け取り時の仕訳
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 50,000円 | 事業収入 | 70,000円 |
| 消耗品費 | 20,000円 |
現金50,000円+商品の時価20,000円=合計70,000円が収入になります。
よくある処理ミスとその原因
❶ 「現金をもらっていないから収入ゼロ」と処理してしまう
最も多いミスです。現物でも経済的利益が生じている以上、収入計上が必要です。現金取引しか意識していない方に起きやすい。
❷ 収入金額を「ゼロ円」にして費用だけ計上する
商品を消耗品費として費用計上しながら、収入を計上しない処理をしてしまうケースです。収入・費用の両方を立てなければなりません。
❸ 「サンプル品だから非課税」と思い込む
サンプル品・モニター品であっても、手元に残る・実質的に利益を享受する場合は課税対象です。「非売品」という言葉に引きずられて収入計上を省略しないよう注意してください。
チェックリスト
レビュー案件を受けたら、以下を確認しましょう。
- 商品の時価(市場価格)を確認・記録した
- 返却か手元保管かを契約書・メールで確認した
- 収入計上のタイミング(商品到着時/動画公開時)を判断した
- 帳簿に収入と費用の両方を記録した
- 時価の根拠(ECサイトのスクリーンショット等)を保存した
よくある質問
レビュー商品をそのまま私用に使った場合はどうなりますか?
業務用として受け取った商品を私用に転用した場合、費用計上はできません。収入(商品の時価)は計上しますが、対応する費用は「家事消費」として処理します。業務用と私用が混在する場合は、使用割合で按分します。
商品の時価が分からないときはどう対処しますか?
企業に「今回ご提供いただいた商品の通常販売価格を教えていただけますか」と確認するのが最も確実です。企業側も請求書や覚書に金額を明記するケースが増えています。どうしても確認できない場合は、同等品の市場価格を調べて記録しておきましょう。
年間の提供商品の合計額が少額でも申告が必要ですか?
事業所得・雑所得の金額がゼロになるからといって申告不要とはなりません。現物提供を含めた収入の合計が確定申告の要否の判断に影響します。給与所得者(会社員との兼業)の場合は、副収入の合計が年間20万円を超えると原則として確定申告が必要です(国税庁タックスアンサー No.1900参照)。
領収書や請求書を発行する必要がありますか?
現物提供の場合、通常は請求書を発行しません。ただし、企業から「金額を明記した受領書」や「覚書」を求められることがあります。書類は双方の確認記録として保存しておくと帳簿の根拠になります。
まとめ
企業から無料で商品を提供してもらうレビュー案件は、現金取引でなくても収入として計上する必要があります。計上金額は商品の時価が原則で、収入と費用を両建てで仕訳するのが正しい処理です。返却前提の場合は収入とならないケースもありますが、契約の取り決めを書面で残しておくことが前提になります。「現金をもらっていないから大丈夫」という判断が、後の税務調査でトラブルになる典型的なパターンです。PR案件が増えてきたタイミングで帳簿の整理を見直しておくと安心です。
本記事は情報提供を目的として作成しており、特定の税務判断を推奨するものではありません。実際の税務処理・申告については、税理士等の専門家にご相談ください。個別事情によって結論が異なる場合があります。
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