株の生前贈与のやり方|非上場株式の株価評価と贈与税申告

非上場株式の生前贈与は、贈与日の株価を会社の規模と株主の区分に応じて評価し、翌年2月1日から3月15日までに贈与税を申告します。相続時精算課税の可否も含め、手順を順に整理します。

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会社の株をそろそろ子どもに渡しておきたい。そう考えて調べ始めると、上場株式のように毎日の株価が新聞に載っているわけではないことに気づきます。決算書を前にして、どこから手を付ければいいのか手が止まってしまう方は少なくありません。

  • うちの会社の株って、1株いくらで贈与すればいいの?
  • 株価は自分で計算できるもの?
  • 贈与税はいくらになって、いつまでに何を出すの?
  • 相続時精算課税を使ったほうが得なの?

結論からいうと、非上場株式の贈与は「贈与日の株価を評価する」「贈与税を計算する」「翌年の2月1日から3月15日までに申告する」という3段階で進みます。ただし株価の評価方法は、会社の規模と、誰が株を受け取るかによって変わります。ここを取り違えると税額が大きくずれるため、まずは自分がどの区分に当てはまるかの確認から始めます。

この記事でわかること

この記事は、非上場会社の株式を持っていて、家族(子・孫など)への生前贈与を検討している方に向けたものです。

読み進めると、次の4点が整理できます。

  • 自分の会社の株が、どの評価方法で評価されるのか
  • 贈与税の計算で何を差し引けるのか
  • 申告期限と必要になる手続き
  • 自分で進めてよい範囲と、税理士に任せるべき範囲

上場株式や気配相場のある株式の評価は別の取扱いになります。この記事では、国税庁タックスアンサーNo.4638が対象とする「取引相場のない株式」に限って説明します。

まず結論:株価は「誰が受け取るか」で決まる

最初に押さえるべき結論は、同じ会社の同じ株式でも、贈与を受ける人が会社の経営を支配している同族株主等か、そうでない株主かで評価方法が変わるという点です。

贈与を受ける人 評価方法
同族株主等(経営支配力を持つ株主) 原則的評価方式(会社の規模に応じて類似業種比準方式・純資産価額方式・その併用)
同族株主以外の株主 配当還元方式(会社の規模にかかわらず)

配当還元方式は、その株式で受け取る1年間の配当金額を一定の利率(10パーセント)で還元して株価を求める方法です。配当が少ない会社では評価額が低く出やすいため、使えるなら使いたい方法ですが、使えるのは同族株主以外の株主が取得する場合に限られます。

なお、会社が「特定の評価会社」に該当する場合は、原則的評価方式ではなく純資産価額方式や清算分配見込額による評価に変わります。該当するかどうかの判定は会社の財務内容によりますので、後述するチェックリストで確認してください。

非上場株式の株価評価の全体像

国税庁タックスアンサーNo.4638に沿って整理すると、取引相場のない株式の評価は次の流れになります。

  1. その株式が上場株式・気配相場等のある株式に当たらないことを確認する(当たらないものが取引相場のない株式)
  2. 会社が大会社・中会社・小会社のどれに区分されるかを判定する
  3. 贈与を受ける人が同族株主等か、それ以外かを確認する
  4. 特定の評価会社に該当しないかを確認する
  5. 該当する評価方法で1株当たりの価額を計算する

会社の規模区分は、総資産価額(帳簿価額で計算した金額)、従業員数、直前期末以前1年間の取引金額によって判定します。従業員70人以上かどうか、業種ごとの資産額・取引金額のボーダーに当てはまるかで大会社・中会社・小会社が決まり、評価方法は次のように分かれます。

規模区分 原則的な評価方法
大会社 類似業種比準方式(類似業種の株価を基に、配当金額・利益金額・純資産価額の3つで比準)
中会社 大会社と小会社の方法を併用
小会社 純資産価額方式(総資産・負債を相続税評価に洗い替えて計算)

判定に使う数値は、原則として贈与の直前に行われた事業年度末の帳簿価額などです。「なんとなく小さい会社だから純資産価額方式だろう」と決めずに、直前期末の数字で判定する必要があります。

【手順①】評価に使う決算書と資料を集める

株価の計算は、直前期末の貸借対照表と損益計算書がなければ始まりません。実際に必要になる資料は次のとおりです。

  • 直前期末の貸借対照表・損益計算書(総資産価額、取引金額、配当金額、利益金額の計算に使用)
  • 直前々期末の決算書(特定の評価会社の判定で比準要素を確認する場合)
  • 従業員数の分かる資料(就業規則、勤務実態の分かる台帳など)
  • 株式の保有状況が分かる株主名簿
  • 類似業種比準方式を使う場合は、国税庁ホームページで公開されている類似業種の業種目別株価

実務メモとして、従業員数の判定では、直前期末以前1年間に継続して勤務していた従業員(1週間当たりの労働時間が30時間未満の方を除く)に、それ以外の勤務者の労働時間を1人当たり年間平均労働時間数(1,800時間)で割った数を加算する扱いになっています。パート従業員が多い会社では、単純に人数を数えると区分が変わることがあるため注意が必要です。

【手順②】贈与する株式とタイミングを決める

株価は贈与の日、つまり贈与により財産を取得した日を基準に評価します。同じ株式を2回に分けて贈与すれば、それぞれの日の株価で評価されることになります。

いつ贈与するかは、次の点を踏まえて決めます。

  • 決算期末をまたぐと、直前期末の数字が変わり評価額が変わる可能性がある
  • 贈与する株式数が増えれば、評価額の合計も増える
  • 同族株主等に該当するかどうかは、課税時期における株主グループの議決権割合で判定し、中心的な同族株主以外の同族株主などについては、その者の株式取得後の議決権の数が議決権総数の5%未満かどうかで判定する
  • 暦年課税で贈与した財産は、一定期間内の贈与分が相続財産に加算される対象になる(令和8年12月31日以前に相続開始となる場合は、相続開始前3年以内の暦年贈与が加算対象)

「今年中にまとめて渡す」か「様子を見て分割する」かで、評価額も贈与税額も変わります。相続税のことも視野に入れながら時期を決めるのが実務的です。

【手順③】贈与税を計算する

贈与税には大きく2つの課税方式があります。株式の贈与では、どちらを選ぶかで計算がまったく変わります。

暦年課税の場合

1年間に贈与を受けた財産の価額の合計から、基礎控除額110万円を差し引いた残額に課税されます。評価額500万円の株式を贈与した場合、課税価格は390万円です。税率は贈与税の税率表(国税庁タックスアンサーNo.4408などで確認できます)を当てはめて計算します。

相続時精算課税を選択する場合

贈与者が贈与をした年の1月1日において60歳以上の父母または祖父母などで、受贈者が贈与を受けた年の1月1日において18歳以上の直系卑属(子や孫など)であれば、相続時精算課税を選択できます。財産の種類・金額・贈与回数に制限はありません。

計算は、1年間に贈与を受けた財産の価額の合計から所定の控除額を差し引いた後の金額に、一律20パーセントの税率を乗じます(控除額の詳細は国税庁の「相続時精算課税の選択」で確認してください)。たとえば評価額500万円の株式なら、110万円と特別控除で課税価格はゼロになり、この年は贈与税がかかりません。ただし、この制度は贈与者ごとに選択でき、一度選択するとその贈与者からの贈与は以後すべて相続時精算課税が適用され、暦年課税には戻せません。贈与時の価額は、贈与者が亡くなったときの相続税の計算に加算されます。

見落としやすいのが、特別控除は贈与税の期限内申告書を提出した場合に限り適用されるという点です。評価額が基礎控除以下だと思って申告書を出さず、後から株価の評価誤りが判明した場合、期限後申告になると特別控除が使えず、思わぬ税額が生じることがあります。国税庁の質疑応答事例でも、この取扱いが示されています。

【手順④】申告と納税をする

贈与税の申告と納税は、原則として財産をもらった人が、もらった年の翌年の2月1日から3月15日までに行います。令和8年中に贈与を受けた分であれば、令和9年の2月1日から3月15日が申告期間です。

申告書はe-Taxのほか、郵便や信書便による送付、税務署の時間外収受箱への投函でも提出できます。提出先は、原則として贈与を受けた人の住所を所轄する税務署です。相続時精算課税を選択する場合は、その最初の贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間に「相続時精算課税選択届出書」を一定の書類とともに提出する必要があります。

納税が一度に難しい場合は延納の制度があります。申告による納付税額が10万円を超えていること、金銭で一度に納めることが難しい理由があること、担保を提供することの3つを満たす場合に、5年以内の年賦で納付できます。ただし延納税額が100万円以下で延納期間が3年以下の場合は担保が不要です。延納できることになった税金には、原則として年率6.6パーセントの利子税がかかりますが、各年の延納特例基準割合が7.3パーセントに満たない場合は、6.6%×延納特例基準割合÷7.3%で計算した特例割合が適用されます。

期限までに申告しなかった場合や、実際より少ない額で申告した場合は加算税が、納税が遅れた場合は延滞税がかかります。

よくある間違い

  • 誰が受け取るかで評価方法が変わることを見落とす。同じ株式でも、同族株主等が受け取るか同族株主以外が受け取るかで株価が大きく変わります。贈与する相手を決めた時点で、必ずこの区分を確認してください。
  • 配当還元方式を誰にでも使えると思い込む。配当還元方式が使えるのは同族株主以外の株主が取得する場合です。親から子への贈与のように同族株主等に該当する場面では、原則的評価方式で計算します。
  • 特定の評価会社の判定を飛ばす。比準要素がゼロの会社、株式等の保有割合や土地等の保有割合が高い会社、開業後3年未満の会社などは、原則として純資産価額方式等による評価になります。判定をせずに類似業種比準方式で計算すると誤りになります。
  • 名義を変えずに「贈与したつもり」になる。株主名簿の名義変更まで行わないと、贈与があったことを後から証明できません。
  • 相続時精算課税の特別控除は申告が前提という点を忘れる。基礎控除以下だからと申告を見送り、後から評価誤りが判明すると、特別控除が使えない事態になります。

自分で確認できるチェックリスト

確認項目 チェック
その株式は上場株式・気配相場等のある株式ではないか □
直前期末の決算書が手元にあるか □
会社の規模区分(大会社・中会社・小会社)を判定したか □
贈与を受ける人は同族株主等に該当するか □
特定の評価会社に該当しないか確認したか □
贈与日を決め、その日の株価で評価しているか □
暦年課税と相続時精算課税のどちらを使うか決めたか □
株主名簿の名義変更を済ませたか □
申告期限(翌年2月1日〜3月15日)を把握しているか □

税理士に相談した方がいいケース

次のいずれかに当てはまる場合は、自己判断で進めずに専門家に確認することをおすすめします。

  • 類似業種比準方式と純資産価額方式の併用が必要な中会社に該当する
  • 特定の評価会社に該当するかどうかの判定が微妙な場合
  • 贈与する株式の数が多く、評価額の合計が大きくなる
  • 相続時精算課税と暦年課税のどちらが有利か判断がつかない
  • 贈与から時間が経過しており、名義変更や申告を失念していた可能性がある

一方、小会社で純資産価額方式により、贈与する相手も同族株主等であることが明確で、評価額が基礎控除の範囲に収まる場合は、ご自身でも整理しやすいケースです。ただし評価明細書の作成には決算書の読み替えが必要になるため、初回だけでも確認しておくと安心です。

よくある質問

非上場株式でも贈与税の対象になりますか?

なります。上場株式や気配相場等のある株式以外の株式は「取引相場のない株式」として評価し、贈与税の対象財産に含めます。評価額が基礎控除額以下であれば贈与税はかかりませんが、相続時精算課税を選択している場合は申告が必要になることがあります。

株価は自分で計算できますか?

計算式が公開されており、国税庁が提供する「取引相場のない株式(出資)の評価明細書」を使えば比較的容易に計算できます。ただし会社の規模区分の判定や特定の評価会社の判定など、前提となる判断が複数あります。まずは判定だけでも税理士に確認すると、その後の計算がぶれません。

贈与するタイミングは決算後と決算前のどちらがよいですか?

一概にはいえません。株価は贈与の日の属する状況で評価され、判定に使う決算書も贈与の時期によって変わります。決算期末をまたぐと直前期末の数字が変わり、評価額が変動する可能性があります。相続税の加算対象期間も踏まえ、年度単位で検討するのが実務的です。

贈与した株式の配当は誰のものになりますか?

贈与によって株式の権利が移れば、贈与後に受け取る配当は受贈者のものです。ただし名義変更が済んでいないと、誰が株主かの整理がつかず、後々の相続で争いの種になりかねません。贈与を決めたら速やかに名義変更を行ってください。

贈与した株式を後から返してもらうことはできますか?

贈与は財産を無償で与える契約であり、一度成立した贈与を自由に取り消すことはできません。生前贈与は「取り消せない前提」で、贈与する株式数と相手を決める必要があります。

まとめ

非上場株式の生前贈与は、次の順序で進みます。

  1. その株式が取引相場のない株式であることを確認する
  2. 会社の規模区分と、贈与を受ける人が同族株主等かを判定する
  3. 特定の評価会社に該当しないかを確認し、該当する評価方法で株価を計算する
  4. 暦年課税か相続時精算課税かを選び、贈与税額を計算する
  5. 翌年2月1日から3月15日までに申告・納税する(相続時精算課税は選択届出書も提出)

株価の評価方法は会社の規模と株主の区分で決まり、同じ会社でも誰に贈与するかで結果が変わります。相続時精算課税の特別控除が期限内申告を前提としている点も、見落とすと税額に影響します。

本記事は情報提供を目的として作成しており、特定の税務判断を推奨するものではありません。実際の税務処理・申告については、税理士等の専門家にご相談ください。個別事情によって結論が異なる場合があります。

相続税は、財産の種類や相続人の状況によって計算方法や特例の適用が大きく変わります。「うちの場合はどうなるか」を知りたい方は、早めに税理士へご相談されることをおすすめします。

毛利順活税理士事務所では、初回のご相談を無料で承っております。お気軽にお問い合わせください。

免責事項 本記事は情報提供を目的として作成しており、個別の税務アドバイスではありません。実際の税務判断・手続きについては、税理士等の専門家にご相談ください。税制は改正される場合があり、記事の内容が最新状況と異なることがあります。個別事情によって結論が異なる場合がありますので、必ずご自身の状況に合わせてご確認ください。

参考:取引相場のない株式の評価、贈与税の申告と納税、相続時精算課税の選択、国税庁タックスアンサー No.4602 土地家屋の評価

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